特集 2006.12/vol.9-No.9

インターネットの現在、広告のこれから

ヤフーとは、どういうメディアか

 インターネットの急速な社会への浸透とともに、インターネット広告市場も右肩上がりを続けてきた。しかし、そのインターネット広告に最近変化の兆しが見える。バナー広告に代わって検索連動型広告が全盛期を迎えるのか? マス広告との関係は? インターネット広告の変化がもたらす広告の考え方、企業活動の変化に焦点を当てた。


 電通の「日本の広告費」では、昨年のインターネット広告費は約2808億円。その20%強はヤフー・ジャパンが占めている。月間利用者数はユニークユーザー(注1)で4500万人、パソコンでインターネットを使う9割の人が利用する。ヤフー・ジャパンとは、どのようなメディアなのだろうか。広告部門全体を統括する武藤芳彦氏に聞いた。

注1)ユニークユーザー:ウェブのアクセス数の単位の1つ。ある一定の期間内に、あるWebサイトに訪れた人数のことで、重複のない利用者数のこと。複数回訪問した人も1人と数える。

――ヤフー・ジャパンは、「日本最大のポータル」とよく言われますが。
 ポータルは、玄関、門という意味ですね。そこから入って、いろいろな情報を探しにいくことからポータルサイトと呼ばれるようになったと思うのですが、ヤフーがサービスを開始した1996年当初は、確かに検索エンジンからスタートしましたから、まさにポータルでした。ヤフーで目的のサイトを探して、そのサイトに行くためのサービスを提供していた。しかし今は、ヤフー自身でさまざまなコンテンツを提供していて、ヤフーの中だけでも、見たいもの、調べたいものから買いたいものまで、満足いただけるレベルには近づいてきています。今のヤフーを我々は、“ライフエンジン”と呼んでいます。最初のポジショニングであったポータルサイトという枠の外に、大きく広がってきていると思いますね。

ヤフーを支える3つの柱


――ヤフー全体の中で、広告売り上げの占める割合はどのくらいなのでしょう。
 05年のシェアで、広告サービス4割、パーソナルサービス4割、ビジネスサービス2割の割合ですね。

――2000年までは、広告が売り上げのほとんどを占めていますね。
 そのころまでは、広告売り上げが95%を占めていて、収益は広告依存型のモデルだったんですね。当時は「ITバブル」「ドットコム企業」という言葉がよく聞かれた時代で、インターネット広告が最初に盛り上がった時期でした。
 その後、ITバブルがはじけて、数年間は広告売り上げも横ばいになりました。要するに、広告モデルだけだと、景気や市況に影響されるということです。ヤフーでは、広告モデルのほかにも収益の柱をつくろうということで、99年には、オークションやショッピングというEC系のサービスを立ち上げています。それから、01年にはソフトバンクと共同で「ヤフーBB」というISPサービス(注2)を立ち上げました。その後も、リクルートと提携して「ヤフー・リクナビ」をつくるなど、通常の広告ビジネスとは異なる分野に事業を広げていきました。
 パーソナルサービスには、オークションなどの会員専用サービスが受けられる「ヤフー・プレミアム」や「ヤフーBB」のISPサービスなどがあるのですが、それらを含めたパーソナルサービスの売り上げや、リクルートなどとの連携によるビジネスサービスの売り上げが、現状のようになってきた。今は、広告、パーソナル、ビジネスの三本柱で経営を支えている状況になっています。

注2)ISPサービス:インターネットに接続するサービスのこと。サービスを提供する事業者(Internet Services Provider)をプロバイダやISPなどと略して呼ぶことが多い。

Yahoo! KAPANの売り上げ構成の推移(金額は各年度末の集計)



メディアとしての転換期

――それまで横ばいだった広告収入も、03年から再び伸びていますね。
 02年後半から03年にかけて2回目のインターネットブームがあって、ナショナルクライアントの方々に、インターネットは広告媒体として使えるという認識を持ってもらえるようになったのが、この時期です。広告予算の一部をインターネットに使う動きが出て来たんですね。
 2000年ころまでの広告主はドットコム系企業が中心でしたが、02年ころから、飲料や化粧品など、いわゆる消費財メーカーの方々が、インターネットの中でも広告展開を始めました。

――その要因というのは?
 コンテンツの充実を図っていくなど、広告媒体として認めていただくための我々なりの努力もあったと思いますが、大きな理由はブロードバンドの普及です。「ヤフーBB」もきっかけになったと思うのですが、この時期にインターネットのブロードバンド化が一気に進みました。
 2000年ころのインターネット広告は、静止画か、何秒間かでループする単純アニメーションが中心でしたが、ブロードバンドの普及で、より大容量のバナー広告が配信できるようになりました。消費財メーカーには、テレビCMと似たものをインターネットでも流したいという要望が多かったのですが、そういう要求にも応えられるようになってきました。また、それ以前から利用いただいていた自動車メーカーの広告主の方も、クオリティーの高いバナー広告をつくるようになってきました。
 また、最初からインターネット広告にも予算がいただけるようになり、広告会社でも、メディアプランニングを立てる段階で、ターゲットに合わせてインターネット広告の検討をしていただけるようになった。そういう動きが加速してきたのがこの時期です。
 インターネットでもクオリティーの高い広告がつくれるようになったことで、クリエイターの方も真剣に取り組まれる方が増えてきましたし、広告スペース自体も大きくなり、クリエイティブ面でもテレビや新聞と連動したメディアミックスが増えてきた。そういう背景もあって、今年から「インターネット クリエイティブアワード」というインターネット広告賞をヤフー主催で始めました。

利用者数をどう活用するか

――日本では、「ヤフーの独り勝ち」は2000年の前から言われていましたが。
 ショッピングの分野では楽天、SNS(注3)ではミクシィがあったりと、残念ながら、すべての分野でまだナンバーワンにはなれていません。ただ、我々の強みは、それを1つのサイトの中で提供していることだと思います。登録した1つのIDを使っていろいろなところに行けるということです。

――しかし、インターネット広告に限って見ればヤフーの強さは圧倒的ですね。
 トータルで見るとそうですが、動画広告ではギャオがありますし、コンテンツマッチ広告ではグーグルのアドセンス(注4)が強い。先ほどのサービスと同じように、そういう分野でもトップをめざしていきたいと思っています。

――今のヤフーの強さは総合力にある?
 総合力というか、月間4500万人の利用者がいるというヤフーのメリットをどう活用するかということだと思うんですね。動画配信も、元々「ヤフー・動画」が先にあったのですが、有料課金モデルでした。そこに、ギャオが無料視聴モデル、つまりテレビCM型を導入してきた。我々も有料モデルを残しつつ、昨年の12月から無料モデルに軸足を移したのですが、今年の9月に、ようやく我々の方が80万人ほど利用者が多くなりました。それも、ヤフーの中にいる人たちを、いかに「ヤフー・動画」の中に呼び込むか、いろいろ努力した結果だと思います。

――月間4500万人という集客力が、ヤフーの強さを支えている?
 ただ、これまでは利用者数が10倍、20倍に増えてきていましたが、これからは今までのように利用者数を増やすことはあり得ない目標になっています。今後は、より長い時間使っていただく、より多くのものを見ていただく、より多くのサービスを利用していただく方向に転換していくことになると思います。

注3)SNS:ソーシャル・ネットワーキング・サービス(Social Networking Service)の略。人と人とのつながりを促進・サポートする会員制のコミュニティー型ウェブサイトのこと。登録制、招待制などのいくつかの仕組みがあるが、自分のプロフィルを公開する点は共通する。

注4)アドセンス:Googleがウェブサイトの運営者に提供しているサービスのこと。サイトの内容に関連のある広告を自動的に配信し、サイト運営者に広告費を支払う。サイトのコンテンツと関連性の高い広告を表示するコンテンツマッチ広告の一種。

ネット広告の課金システム

――インターネット広告の料金ですが、表示回数課金型の「インプレッション」と、クリック課金型の「CPC(コスト・パー・クリック)」の2つが、いま主流になっていると思うのですが。
 インプレッションというのは、バナー広告のような露出型の広告で、一般に言うCPM(コスト・パー・ミル)、1000人当たりの到達が課金の基準になります。それから検索連動型広告やコンテンツマッチと言われる広告は、CPCモデルで、クリック課金です。それから最近は、CPA(コスト・パー・アクイジション)という成果報酬型もあります。ほかにも、モバイルやメールの料金がありますが、大きく分けると、この3つです。
 我々も元々はCPM型がほとんどでしたが、オーバチュアとの協業で02年からCPCモデルを導入しています。また、昨年からはバリューコマースとの業務提携でCPA型も始めています。現在は、CPMモデルのシェアが高いのですが、CPCモデルや、これから大きくなるだろうCPAモデルも取り込んでいます。

――バナー広告と検索連動型広告の違いをどう考えていますか。
 日本の広告費は約6兆円ですが、企業が実際に使う販促費のすべてが、その中に含まれているわけではありません。それをインターネットに取り込もうという考え方があって、それに近いのが、おそらく検索連動型広告だと思います。
 今でこそ、大手企業が検索連動型広告とマス広告を連動させたキャンペーンを盛んに行うようになってきましたが、検索連動型広告は元々は中小企業の販促予算でもできる広告というところから始まっています。クリック課金で予算の上限をあらかじめ設定できますから、極端なことを言えば10万円の予算でもできる。
 一方、バナー広告の基本は表示回数、インプレッションですが、その効果指標が今のところ明確になっていない面もあります。たとえば、表示もローテーションで行われますから、掲載場所によっては自社のバナーに巡り合う機会がないこともある。検索連動型の場合は、少なくとも自分のホームページに1人来るごとに課金されますから、広告の仕組みにあまり精通されていない方でも理解しやすい。非常にわかりやすい広告モデルです。

――CPM型とCPC型の割合は、最近変わってきた?
 アメリカでは、CPC型のシェアが高くなっていますが、日本はCPM型の割合が多いですし、インプレッション、広告の露出を求めている広告主の方も多いですね。それが日本でも逆転するかは、まだわからない状況ですね。

広告コンテンツの進化

VAIO×Yahoo! JAPANコラボレーション企画「知られざる京都へ」
VAIO×Yahoo! JAPANコラボレーション企画「知られざる京都へ」
実施期間:2005 年11月17日―2005年12月18日
――露出型の広告は、意外と日本の消費者に合っているところがある?
 それは確かにあるかも知れません。昨年暮れと今年の初めにソニーのVAIOで京都特集、江戸特集の中において初めて全画面広告を採用しましたが、非常に評判がよく、ネガティブな意見はありませんでしたね。テレビCMや新聞15段と同じで、きれいな広告をつくれば見てくれるということを実感しました。

――ヤフーではお花見特集や花火大会特集を初期のころからシーズンになると組まれていますが、それとは違う?
 ほかにもクリスマス特集などがありますが、これは新聞社でいう連合広告に近いんですね。
 ヤフーの特集にはタイプがいくつかあって、その1つが1社提供の特集です。テレビの番組提供と同じで、ソニーがヤフーの京都特集、江戸特集を提供するという考え方です。
 ソニーの特集は、VAIOのイメージと、「日本的」をテーマにした特集を組み合わせたものです。特集の中にはVAIOはまったく登場しませんが、この特集に合った広告をつくっていただくことによって連動を図った。広告とのシナジー効果がうまくいった特集だったと思います。社内に特集を専門で作っているチームがあって、企画から制作までやっています。

――雑誌の編集タイアップ的な特集もある?
 特集の中に商品が登場するものもあります。これは、どちらかというと、新聞の記事体広告に近いですね。

――新聞の編集特集と企画広告の関係に似ていますね。
 そこは正直言うと、新聞社や出版社のやり方を参考にさせていただいたんですね。こういう特集は2001年から始めたのですが、バナー広告やテキスト広告だけでなく、企業のさまざまなニーズに応える中で、記事広告型や特集提供型が必要になってきたということです。
 それから、バナー広告の先には企業のホームページがありますが、通常、いつ見てもいいようにつくられています。キャンペーンの時に、広告主の方は、どこかにそのページをつくらなければなりません。その制作のニーズもあって、そういうチームも社内につくっています。
 また、それをヤフーのサービスと連動させる方向にも発展させてきました。たとえば、ダイキンのエアコンの広告で「ぴちょん島」をヤフー内につくって、キャラクターのぴちょんくんのゲームや音楽、ムービーが見られるコンテンツをつくり、そこからダイキンのサイトにリンクするという企画もやりました。これも、ヤフー・ゲームやヤフー・ミュージック、ヤフー・ムービーといったサービスと連動してつくっています。こうした制作も最初は試行錯誤でしたが、今は技術、構成、デザインに対しても一定の評価を頂けるようにはなってきましたね。

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