立ち読み広告 2006.12/vol.9-No.9

大好きなあの人にも、「読ませ大賞」。
 10月27日は文字・活字文化の日。昨年から始まって(というのも変な言い方だが)、今年は2回目だった。11月3日文化の日を中日とする読書週間の始まりの日でもある。
 この日の朝刊、36面を開いてたまげた。ページ全体がピンクなのである。中央でモデルの押切もえがほほ笑んで、「好きな本は、好きな人にも読ませたい。」というコピー。「読ませ大賞」の広告である。広告主は財団法人出版文化産業振興財団、略称JPIC(ジェイピック)。出版社や取次、書店などの団体で構成される財団だ。
 
気になるランキングの行方

 「読ませ大賞」というのは、「この本はすごく面白かったから、好きなあの人にも読ませたい」という本を推薦・投票する、一般参加の賞。http://読ませ大賞.jpから誰でも投票できる。日本語のアドレスである。「パソコンは持ってないぞ」「インターネットは苦手よ」という人でも大丈夫。はがきでの投票も受けつけている。
 さっそくこのアドレスにアクセスしてみた。投票は簡単だが、なかなか奥が深い。というのは、単に本を選ぶだけでないのである。好きな人に読ませたい本を手渡す際に添えるメッセージを書くほか、投票者の属性(性別・年代・地域・職業など)も入力する。サイトではランキング(投票の途中経過)が見られるようになっている。総合ランキングのほか、性別・世代別・地域別・職業別のランキングも見られる。マーケティングにも使えそうだ。
 この原稿を書いている時点では、総合ランキングの1位は野口嘉則『鏡の法則』で、東北地方の20代男性が選んだ1位は宮崎哲弥『新書365冊』、九州地方の10代が選んだ1位は恩田陸『夜のピクニック』だ。応募の締め切りは12月31日(はがきは11月30日)なので、それまでこのランキングがどう変化するのか気になる。

本はコミュニケーションツール

 本屋さんの世界には本屋大賞という賞がある。今年はリリー・フランキーの『東京タワー』が選ばれた。本屋大賞は本屋さんが売りたい本を選ぶ賞である。読ませ大賞は私たち読者が選ぶ賞だ。本屋大賞は1年内に刊行された小説だけが対象だが、読ませ大賞はジャンルや刊行期間を問わない。
 でも、読ませ大賞のいちばんのポイントは、「好きな本を好きな人に」というところだと思う。漠然と「オススメする」ではなくて、具体的に相手を思い浮かべて、「あの人に読んでもらいたい」と考えるところがいい。
 本はコミュニケーションの道具にもなりうる。どんな作家が好きか、どんな本に感動するかを聞くと、その人の性格もなんとなく分かってくる。よくドラマのお見合いシーンでは相手の趣味を聞くけれども、「あなたの好きな作家、好きな本を3冊挙げなさい」と質問したほうがよほど相手のことがよく分かるんじゃないだろうか。
 わが家ではこれと似たことを実践している。妻のベッドサイドに棚があり、私が読んで「これは妻にもオススメだ」という本はこの棚に置く。食事しながら「あの小説はここが面白かった」とか、ごくたまに「あのところが嫌だった」などと話す。本から会話が生まれる。

10月27日 朝刊 13面(左) 17面(右)
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