From Overseas - NewYork 2006.12/vol.9-No.9

グーグル、新聞広告を仲介
 「グーグルが新聞広告を仲介」。11月6日付の米国主要紙は、一斉にこの事実を報じた。インターネット検索サービス最大手・グーグルがアドセンス(ウェブサイトの内容と連動させて、最適な場所にインターネット広告を配信するシステム)をもとに開発したシステムを利用して、新聞社と直接、広告取引する試験サービスが11月中に、3か月間の予定でスタートするという。ニューヨーク・タイムズやUSAトゥデー、ワシントン・ポスト、シカゴ・トリビューンなど、全米で50以上の有力紙が参加、発行部数の合計は1500万部以上となる。
 詳細はこうだ。まず、参加新聞社がグーグルの新システムに、提供する広告スペースの定価、サイズ、掲載面、掲載地域などをリスト化して公開する。それを広告主が閲覧し、希望の案件に対し予算に基づいた料金を入力して入札。新聞社側が入札状況を見て、どの広告主にそのスペースを販売するか決定する。当初3か月間は約40万社と言われるグーグルの契約広告主のうち100社に限定し、その間は本来20%に設定されている手数料は無料にするとしている。
 布石はあった。今年1月、シカゴの新聞サン・タイムにおいて、実験的にアドセンスを新聞に移植する試みが行われている。シカゴ・ビジネス誌によると、スポーツ面に「Ads by Google」の文字と共に掲載されたアメリカンフットボールのDVDの広告は、掲載後50%の売り上げ増を記録。「大いに満足した」との広告主談話を紹介している。アドセンスと新聞媒体の相乗効果と、新聞に常時存在する空きスペースを目の当たりにしたグーグルが、2年前から進めていたという新聞広告の仲介を、ここから一気に加速させたと見ることができる。
 今回リリースされたシステムのカギは、広告主が自分の希望する条件で広告スペースを検索できること。そして新聞社側に最終セールス先の決定権があることである。これが、広告主・新聞社双方にメリットを生み出している。広告主にとっては、「広告会社を使用したことがなく、既存メディアに広告を出したことがないが、自分で最適な場所を見つけられるのであれば新聞広告を利用してみようと考える」(Ebags、マーケティング担当役員コッブ氏)きっかけとなり、新聞社にとっても、「埋めきれないスペースに自社原稿を入れる代わりに、新規広告主が獲得できる」(シカゴ・トリビューン、開発担当副社長ヤングマン氏)可能性があり、「社員ではフォローしきれない小規模の広告主にセールスし、他紙との競争で有利に立てる」(シアトル・タイムズ、副社長レンク氏)など、テスト期間のスタートを前に、期待を膨らませている。
 しかし、リスクが全くない訳ではない。まず、グーグルの広告主には、インターネット広告に比べ効果が計りにくいとされる新聞広告を利用した経験がゼロに等しい。そのため、どれほどの利用頻度があるか見当がつかず、グーグル側も各新聞社も、テスト期間中の売り上げ予測は困難だとして、具体的な目標数字を挙げることができていない。また、新規の広告主が新聞に流入すればいいが、既存の大型広告主までもが、コスト削減の可能性を目指し同システムでの入札へ興味を示すことである。各新聞社もこの危険性は十分認識しているようで、広告業界誌のアドエージは、「テスト期間中に、十分な新規広告主が獲得できなければ、新聞各社はあらゆる手を使ってグーグルを業界から追い出すだろう」としている。
 グーグルの印刷媒体責任者であるフィリップス氏は、年間480億ドル(約5兆7,600億円)と言われる新聞広告市場に興味があると発言してはばからない。今回導入されるシステムは、既存の広告会社が行っていたメディアプランニング・バイイングといったサービスを、すべて広告主のセルフサービスにしてしまった。グーグルに専門知識は必要なく、システムさえうまく働けば、初期投資だけで後は自動的に手数料が入ってくる仕組みである。グーグルはユーチューブと連動してのテレビCM進出、新たに取得したラジオ広告会社ディーマークを利用してのラジオCMへの進出も開始しており、そこでも今回と同様の手法をとってくることは想像に難くない。広告会社はクリエイティブのみ、という広告主が今後増えることになるのか、まずはこの3か月のテスト期間に注目である。
 
(11月13日)
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