CrossMediaの必然性 2006.12/vol.9-No.9

クロスメディアからクロスコミュニケーションへ(2)

 メディアを「広告媒体社が販売する広告スペース」と狭義で定義すると、「クロスメディア」というワードは本質的な意味をもたない。最近はCGMももう時代遅れのワードのようで、欧米では、UGC(User Generated Content)と呼ぶそうだ。もともとCGMと言い出したのは日本だけという説もある。CGMがどちらかというと、ブログやSNSというツールの方に目が行っていて、メディアと称したのに対し、本質は「消費者という側面ももつ生活者が作り上げるコンテンツ」ということである。
 生活者が接するあらゆる情報接点を「メディア」と呼んでしまうこともできるが、広告媒体社や広告会社にとっては、広告スペースとしての「メディア」という概念があやふやなのは困る。(広告主から見れば、口コミやパッケージまで、すべてメディアと称する考え方はある)
 そこで、クロスメディアという概念も、一歩進めて、「クロスコミュニケーション」という考え方が本質だといえる。
 生活者は広告やメディアを欲しているのではなく、コンテンツを求めているからだ。マーケティングメッセージをうまくコミュニケーションさせるには、コンテンツとしての魅力が不可欠である。
 そもそも確立された広告フォーマット上に広告素材を制作するほかには、基本的に既存のコンテンツにブランドのメッセージを挿入する「プロダクトプレイスメント型」とブランドのメッセージをコンテンツに仕立てる「ブランデッド・エンターテインメント型」のふたつのアプローチがある。後者はWebマーケティング事例としてあまりにも有名な「BMWfilm.com」が伝説的になっているように、ここ最近はやりのアプローチである。また「プロダクトプレイスメント」も進化して、例えば映画のようなコンテンツに対しても「プロダクトインテグレーション」と呼ばれるような、シナリオレベルからマーケティングメッセージを挿入して、プロダクトがコンテンツのテーマ性のなかにしっかり組み込まれる手法も欧米では確立している。
 いずれにしてもこうした動きは、15秒のテレビCMというような広告フォーマットありきでコミュニケーション開発を行う従来とは、趣が異なる。
 メディアニュートラルなコミュニケーション開発とは、まず最初にマーケティングメッセージをどのようにコミュニケーションコンテンツとして仕立てるかの作業があり、次にコンテンツに応じたメディアを探す手順となる。
 この時、様々なメディアをそのコンテンツを発信するメディアとして見た場合、生活者(ないしターゲット)に対する情報深度の違いを想定して、それぞれに役割を持たせてコミュニケーション全体をデザインする考え方が「クロスコミュニケーション」といえる。
 Webだけでなく、アウトオブホームメディアや、いわゆるクリエイティブメディア、またイベントも話題の発信メディアととらえて組み込む志向が必要で、ここにはもうATL(アバヴ・ザ・ライン)、BTL(ビロウ・ザ・ライン)で一線を画して、イベントは販促領域とする発想はない。
 さらにブログやSNSといったツールを獲得して大きなパワーを得た「WOM」=「口コミ」もプログラムしたコミュニケーションデザインが必要となる。
 こうした次世代型のコミュニケーション設計のためには、広告会社は、確立した既存の業務分担というか、スタッフ編成を打破しないといけない。まさにコラボレーションが不可欠で、領域を超えて融合すること(重なり合うこと)が必要だ。
 そして、Webを中核としたコミュニケーション構造をつくる場合(これが主流となるだろうが)、もっと既存メディアのコンテンツ制作力、編集力に注目すべきである。ネットには膨大な情報があふれているが、本当にクオリティーの高いコンテンツは少ない。新聞や雑誌、あるいは映画などのコンテンツ制作・編集力を借りて、様々なサイズのキャンバスに絵を描き、かつ構成力を持たせる。こうした取り組みが求められている。

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