立ち読み広告 2006.11/vol.9-No.8

「オススメ読書」は、書店員が知っている。
 9月27日の夕刊は「本屋さんへ行こう!」のマルチ広告。第1面から第20面まで、「テレビBOX」のある第16面を除いて、全ページに本とその関連の広告が続いている。壮観だ。
 しかもこの夕刊マルチ、眺めるだけで日本の出版の「現在」が見えてくる。
 たとえば第2面の講談社文庫の全5段。『アフターダーク』の村上春樹はノーベル文学賞最短距離(惜しかった!)、高村薫『照柿』は全面改稿、そして浅田次郎『地下鉄に乗って』、平山護『ありがとう』、横山秀夫『出口のない海』の映画化3作品。
 第4・5面、主婦の友社の見開き全5段には『愛育病院の安産レシピ』があり、第7面角川書店全5段には西原理恵子の絵本『いけちゃんとぼく』がある。
 私がグッときたのは第8面にある三浦しをん『風が強く吹いている』(新潮社)の全5段広告。これには山口晃の装画が大きく使われている。山口は土曜日の朝刊に連載中のドナルド・キーン自伝『私と20世紀のクロニクル』にも挿絵を描いている。日本画のように緻密だけれども日本画でない独特の世界が、キーンさんの自伝をより魅力的にしているように、この『風が強く吹いている』の広告にも絵を読み解く面白さがあって楽しい。
 
店頭からの発信が読者を増やす

 でも、この夕刊マルチの1番の目玉は、第13、17面で紹介されている「書店員のオススメ読書日記」というブログの紹介である。読売新聞の電子版、YOMIURI ONLINEの「本よみうり堂」のなかに誕生したブログサイト。連日、48人の書店員がオススメ本を紹介しているのだ。この48人の顔ぶれがすごい。ベテランもいれば比較的新人もいる。全国各地どころか、シンガポールの紀伊國屋書店に勤務する人までいる。まあ、ネットだから世界中とつながっているわけだけれども。
 さっそく私も「読書日記」をのぞいてみた。皆さん熱心に書き込んでいるではないか。せいぜいPOPと同じ程度のコピーが2、3行だろうなどと思っていたのだが、かなりきっちりした書評になっている。あなどりがたし!
 最近、書店員の発信が増えている。週刊誌等で書評を連載する書店員もいるし、出版広告に書店員の言葉を載せるのはあたりまえになった。おそらく、身近な本の案内人として、読者が寄せる期待が大きいのだろう。ブログ「書店員のオススメ読書日記」もこうした傾向の表れだ。
 いいことだ。というのも、少し前まで、本を読まない書店員、本を知らない書店員が、書店界では問題になっていたからだ。ある書店の集まりで講演した際、「書店員こそもっと読書を」と話したら、「いや、本屋が本を読む必要はない」とベテラン書店主に反論されたことがある。読んでいなくても、どんな内容か知っていればそれでいい、というのが常識だった。しかし、それでは読者は満足しないし信頼も得られない。
 ブログ「書店員のオススメ読書日記」は、読者の書店に対する信頼や関心を高めると同時に、全国(いや、全世界?)の書店員にとっても大いに刺激になる。本を読み、本について発信する書店員が増えれば、読者も増えるのだ。

9月27日 夕刊 13面 9月27日 夕刊 17面
もどる