CrossMediaの必然性 2006.11/vol.9-No.8

クロスメディアからクロスコミュニケーションへ(1)

 マーケティング活動を企画推進する者すべてにとって、ここ何年かで起きていることは、とてつもなく大きな波と言っていいだろう。しかもそれは立て続けに2波襲ってきた。第一波は、Webという仕組みによって、「企業が自社メディアを獲得した」ことである。これによってメディア(媒体社)と広告会社に多大な影響を与えることになった。そして第二波は「消費者がメディア(発信メディア)を獲得した」ということである。これがまたマーケティングを遂行するすべての企業に多大な影響を与えている。
 従来、メーカーを中心とする広告主企業にとって、エンドユーザーは流通の先にいて、なかなかコミュニケーションのとりにくい相手であった。いちばん大事な顧客そのものとのコミュニケーションであるにもかかわらず、マスメディアを中心としたメディアを介してしかこれを行えなかったといっていい。だからこそ、メディアの情報をもってくる広告会社の営業は役に立つ存在だった。ところが、インターネットがこの様相を一変させる。Webは企業にとって、初めて獲得した自社メディアであり、自社マーケティング装置であり、自社の販売チャネルである。これを使えば、まず顧客とダイレクトにコミュニケーションがとれる。また関心をもつ見込み客が、向こうからアクセスしてきてくれるという何ともありがたいことになっている。そしてそれは量的にも質的にも接触状況が把握できる。
 企業のWebサイトの価値はものすごい勢いで上がっている。広告メディアとしての価値も、マーケティング装置としての価値も、大企業のそれは実に数百億円規模になるものさえ出てきた。この状況では、マス広告の市場がシュリンクするのはある意味当然である。
 そこで、企業Webをひとつのメディアとして、場合によってはコミュニケーション戦略の「核」に据えてキャンペーン構造をつくってみようということになった。メディアとしてのインターネットは、ネット広告のマススケールのインプレッション効果や短期間に大量に企業サイトに集客できる能力と同時に、従来にないターゲティング技術をもつ。これにマスメディアの広告効果を組み合わせて、企業Webサイトに従来のマス広告ではできにくくなっている購買意思決定を促進する効果を担わせる仕組みが成立した。これがクロスメディアの基本的な考え方である。
 さて、ところがいわゆるWeb2.0と定義される現象は、単に従来のメディアという概念での組み合わせだけでは許されないマーケティング状況を生み出した。CGM(コンシューマ・ジェネレイテッド・メディア)がコミュニケーションデザインの基本構造を変えつつある。商品の機能や性能、またそれによって得られるベネフィットは、企業発のメッセージの信頼感が最も高いが、商品によってもたらされる「体験価値」は、実際に使った人(同じ消費者という立場の人)の評価の方がメッセージとして圧倒的に強い。従来消費者同士がコミュニケーションする環境などなかったわけだが、ネットが(ブログやSNSが)これを容易に実現してしまった。このとき消費者が求めているのは、メディアでも広告でもなく、コンテンツである。マーケティングメッセージをコンテンツとして受け入れてもらう工夫が必要だ。また、CGMによる口コミの影響力を視野に入れたコミュニケーション戦略の立案が必須になった。
 つまり、考え方の問題であるのだが、「クロスメディア」から「クロスコミュニケーション」発想が必要ということになってきた。(つい最近「クロスメディアだ」と言ったばかりでたいへん恐縮なのだが……)
 それだけ、歴史的な大きな変革が、立て続けに来たのだ。
 これからは、CGMによる口コミ効果も含め、各メディアに載せるコミュニケーションコンテンツの、それぞれの生活者への影響度、関与度の深度を想定し、デザインする時代になった。コミュニケーションコンテンツを軸に構成する発想が重要で、だからこそあえて「クロスメディア」から「クロスコミュニケーション」へということになるのだ。

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