From Overseas - NewYork 2006.10/vol.9-No.7

今、注目を集めるポッドキャスト
 ポッドキャストとは、インターネット上で配信される音声番組などを、パソコンや携帯デジタルプレーヤーにダウンロードして聴取する、いわばネットラジオである。2004年夏に米国で始まったこの新しいメディアが、動画も再生可能なアップル社のiPodの登場もあって、今、注目を集めている。
 米国では、2,200万人の成人がiPodなどの携帯デジタルプレーヤーを所有し、その内の約3分の1がポッドキャストを利用している(ピュー社調べ)。また多くの大学が授業をポッドキャストで配信するため、入学時にiPodを無償配布しており、2005年のワード・オブ・ザ・イヤーにも「ポッドキャスト」が選ばれるなど、もはや若い世代の日常生活になくてはならない存在となりつつある。
 これに目をつけ、ポッドキャストを積極的にマーケティングに使用する動きが広まりつつある。製薬大手のジョンソン&ジョンソンは広告会社R/GAと組んで、現役女子高生2人組が脚本を書き、司会も務める人気番組、“へザー&ジョニールとダウンロード”を制作・配信している。そのなかで2人は毎回、コンタクトレンズ「アキュビュー」はクールだ、とのイメージをアピールしている。ジョンソン&ジョンソンのアキュビュー部門責任者であるケルマン氏は、「同番組は間違いなく10代におけるアキュビューの認知度を向上させた。重要なのは、我々自身が彼らの居場所(ポッドキャストなどの新メディア)に出向き、同世代の生の声でアピールすることだ」と語っている。またゼネラル・モーターズは、副社長のボブ・ルッツ氏がNYモーターショーで新車について語る動画ポッドキャストを配信、月ごとのユーザー数は、昨年の39,000人から87,000人に激増したと発表している。
 既存メディアが企業向けに番組を用意するケースもある。雑誌『ヴォーグ』は、同誌の広告主であるギャップのスポンサードを受け、ギャップが契約するモデルや女優を起用した動画番組を制作・配信している。番組内容は流行の髪形やファッションなど、ヴォーグの持つコンテンツをフルに生かし、視覚に訴えるものになっている。
 ユーザーにとってポッドキャストの最大の利点は、アップル社のiTunesなど受信ソフトに一度登録しておけば、常に最新版がダウンロードされ、携帯デジタルプレーヤーをパソコンに接続するたびに自動的に内容が更新される利便性にある。また番組を配信する側にとっては、音声や映像を通してダイレクトに情報をユーザーに訴求できる。動画であればそれなりに制作費もかかるが、ジョンソン&ジョンソンのように音声のみなら制作費もさほどかからない。まさに送り手と受け手を多面的に結び付ける「新メディア」という訳である。
 番組配信は大手企業だけでなく、中小や個人事業主、はては個人にまで拡大。その数は20,000を超えるとも言われている。かのアーノルド・シュワルツェネッガー・カリフォルニア州知事も公式サイトで配信している。
 しかしポッドキャストをメディアとしてとらえるべきか疑問視する声があるのも事実である。企業によるポッドキャストの配信は、これまでにも見られた「企業ブログ」を音声と映像に置き換えただけのものであり、既存メディアの持つ情報の客観性・信頼性とは、まだ大きくかけ離れた存在である。また魅力ある番組ができれば、直接ユーザーに配信できる。しかしその対象は、あくまでポッドキャストを日常的に聴取する、若者を中心とした層に限られている。
 一方、既存メディアの多くは、自らのニュース記事などを配信することを目的にポッドキャストを利用しており、CNNのように高い評価を得ているところもある。我が読売新聞も、ヨミウリ・オンラインで最新ニュースをポッドキャストで配信、毎日更新している。興味のある方は試してみてはいかがだろうか。
 
へザー&ジョニール
(9月6日)
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