こちら宣伝倶楽部 2006.10/vol.9-No.7

しっかり説明できる商品は売れる
イラスト 6月号での発言「テレビCMでは伝わりにくいこと」は、読者の方々から同意、同感のご意見をいただいた。みんなそう思っているのだがよく公の場で発言したとか、今考えつつあることに自信がもてたなど、ひとつひとつがうれしいことで、日本の広告が少しずつ理性をとり戻していくようにも思えた。ビジネスがはかどらなくて各社の宣伝担当が苦労しているからこそ常識と思っていたことに疑問をもち、自主的に悩んで考えるようになったお陰でもある。

広告が効かない本当の理由

 広告は「経費」なのか「投資」なのかときどき議論される。広告するにはなんらかの思惑があるからで、経費だったらあまり間のあかぬうちに成果がかたちになって表れてほしいと願い、できればその期のうちにかけたコストはとり戻したいと思う。投資だったら今すぐにとはいわぬが、近い将来如実にかたちになって、時の成果に結びついてほしいと願う。今日から明日に納得できる事実を望むか、来週、来月あるいは来年にそれを期待するかの違いで、「経費」はやや戦術的今すぐ発想であるのに対して、「投資」は少し先にねらいを定めた戦略的魂胆あり発想ということにもなる。じつはこの戦略型の発想というのが最近は少なく弱くなって、せっかちに成果を、それもかなりあつかましめに望んだり期待する広告やプロモーションが増えている。今すぐに効く即効性を広告に望むから、広告に品位も風格もなくなって、周囲をうまく包み込むような力もなくなっている。けたたましいだけの広告は結果的に経費高になって、広告主の広告観をも歪めていくもとになる。
 広告すればそれなりの成果がでてほしいと広告主は期待する。事情のよくわからぬ学習不足の経営者の中には「広告すれば売れるもの」とかたくなに信じている人がいて、売れないのは宣伝部の努力不足と思う人もいる。こういう時営業や販売担当からは「決してそうじゃない」という助け船はまずでてこない。広告会社は広告の量(金)と質(クリエイティブ)だといって、経営者の曲がった見解に拍車をかけ、アカウントの交代チャンスをねらってきたりする。
 広告が反応しない、効かない、届かない最大の理由に、広告の素材、つまりテーマになっている商品やサービスに説得力がない、かんじんかなめが輝いていないことと、広告のあおりをうまく利用して商売をプラスに転じる、営業や販売の全体力や推進力に不備があることを、とりあげて内部議論する社は意外に少ない。

同じような商品が市場の主人公

 広告商品の完成度が低い、鮮度を感じないのでインパクトがない、果たして広告商品たり得るかどうかの議論はほとんどタブーだ。メディアや広告会社やプロダクションは、めったなことではそれを口にすることはない。年中行事化しているキャンペーンを、ただ日程こなしの作業として習慣的に位置づけてしまうと、広告のテーマそのものについて、社内でも大いに摩擦をおこす真剣な議論というのはなくなる。「たりぬところは、なんとか表現のテクニックで」などというのは顧客に対して失礼だし「承知しました」と受けてしまったりするのは罪悪だ。
 世の中に新製品はたくさんあるが、天地をゆるがす新製品は少ない。その社にとっては新製品であっても、業界やカテゴリーや、消費者から見れば「出おくれたお色なおし商品」であることが多い。はじめから広告が効きそうにない商材の広告は、はっきりいって大半がロスだ。
 同じような商品を、同じような製法で作り、同じような場所で、同じような方法で売るのは決して豊かな時代とはいわない。
 大手量販店やコンビニエンス・ストアが「テレビCM」をやる予定があるかどうか「タレント」は誰か「GRP」はいくらかなどたずねてから、その商品を扱うかどうか、棚割りに組みこむかどうかをきめると、むしろ販売店側の浅い見解を批判したりする場合があるが、そうでもして振り落とさない限り、同等同様の商品が並びすぎて店が殺されると考えるのが正しいのだと思っている。メーカーの怠慢と切磋琢磨不足は反省されてもよい。その社の命たるべき商品が堂々とまん中にあって、テーマや話を横道にそらさず、イメージなどというものにおぼれてしまわず、核心や真実をさけてクリエイティブの小手先芸で広告というコミュニケーションをつくりあげないことを緊急提案しておきたい。

きちんと商品を語る広告を

 その商品はその社になんらかの理由と自信があって世に出る。どうしてもわかってもらいたいポイントが必ずある。競合品とくらべてわかってほしいこと、伝えたいことが必ずある。それを伝えること、そこへ導く端緒をつくるのが広告の仕事だと、もういちど話を戻すことであり、「広告の意志」を広告主の理性第一に戻すことだと思っている。広告で遊ばれては困るのだ。
 世界には20億ページ以上のホームページがあるという。ネットの世帯普及は90%に手が届くし、05年末でインターネットの利用人口は約8600万人で普及率は66・8%だと聞く。買い物をする時、約60%の人はネットで下調べをして、うち約30%はそのまま購入するとも聞いた。広告だけではよくわからない、広告とはそのようなものという常識を、本当は広告好きな次世代生活者に与えてしまったことになる。
 「商品のことがよくわからない広告」でなく、自信たっぷりに「商品のことをていねいに語ってくれる広告」こそが、顧客第一をうたう社の広告の原型だと思うし、堂々とそれができる商品を、胸はって市場におくりだすことが、ものを作る社の社会的使命であり、責任だと思う。
 一度にまとめてたくさん売ろうなどと考えずに、目の前にいるたったひとりの顧客に、たったひとつの商品を売る広告の作法を思い出してみてほしい。各社の商品は本当はもっと強い力を持っている。そのことを脇におきすぎて、話題づくりや作品づくりに重点がかかりすぎると元来は売れる力を持っていた実力商品が、話題不足や作品としての足跡不足だけで淘汰されるようなことになる。
 方法のひとつとして研究してほしいのは、テレビでなく新聞できちんと語れる広告を考えてみてほしい。そんな文字の多い広告を誰が見ると必ずいう人がでてくる。その商品に興味のない人は読まなくてよろしい。必要とする人はその広告を細部にわたって読んでくれるはずだ。
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