CrossMediaの必然性 2006.10/vol.9-No.7

マーケティングメッセージのリレー効果

 最近、多くのテレビCMで「詳しくはWebへ」または「○○○で検索を」といったWebサイト誘導を試みている。
 ターゲットである見込み客は、テレビ広告を見ただけで購買行動を起こす訳ではなく、購買行動に至るだけの興味関心が顕在化すれば、Webサイトの閲覧(つまり商品やサービスの内容の理解を積極的に行う行為)によって購買意思決定により近くなる。Webサイトはただ広告的効果を求めるメディアではなく、ユーザーにブランド体験をさせ、購買決定のために比較検討行為を行うターゲットに、ブランド決定を促す装置である。単なる「コミュニケーションメディア」か「ブランド決定促進装置」と見るか、ここに大きな違いがある。
 基本的なことを言えば、「広告メディア」とはプッシュする構造になっているものを言う。ユーザーのプル行為に依存しないといけないものは正確には「広告メディア」と言いがたい。ただし、プッシュする広告が、すべての機能(アウェアネス〜ブランド認知、理解、比較検討…)を果たせなくなった現状では、そこはWebを使ってのユーザー側のプル行動に依存しなければ広告の最終的な目的を達成するのは無理である。そこでプッシュ型メディアとプル型メディアをリレーさせて、見込み客を購買意思決定のレールにうまく乗せる構造をとらなくてはならない。
 そのいい例がテレビでの告知で、関心のある見込み客をWebに誘導することである。これは既にひとつのキャンペーンアイデアではなく、基本手法ともいうべき確立したキャンペーンスタイルである。
 このモデルの進化型は、誘導の時間軸、モード、フックなどを多様化させていく方向となると思われる。つまり、現状15秒のテレビCMで、「○○と入力して検索を」という誘導を(つまりCMを見た人のうち、比較的即時にWeb検索と閲覧行為を行える人を捕まえることになる)行うだけでなく、日ごろから特定の関心を示しているネットユーザーをターゲットにプッシュ型広告を訴求して、ブランドの刷り込みを行い、CMがリマインド効果を生む構造や、閲覧行為に何らかのインセンティブを仕掛けることなど、この手の手法はもっと多様化することになるだろう。
 とにかく、Webへの誘導と期待するアクションをターゲットに起こしてもらうことが、キャンペーンの目標となることで、広告の成果は数値化される。Webでのユーザー行動がどう変化するかをウオッチングしながら、マス広告やネット広告のメディアプランやクリエイティブを最適化する作業がイメージできる。
 この時、ブランディングという作業と広告のROI(=ROAS:Return on Ad Spend)をマーケティングの時間軸の違いととらえて、中長期でROASを高く維持するためのコミュニケーションをブランディングだと考えることになるだろう。Webで期待されるユーザーアクション(=これが購買にリンクする)獲得のパフォーマンスをあげるためのマス広告コミュニケーションという発想も芽生えるはずである。
 テレビCMのクリエイティブは、Webにどう接触してもらうかをテーマにつくられることが多くなる。Web誘導のために、広告コミュニケーションコンテンツ(ターゲットに興味をもってもらうコンテンツ)の開発がまずあって、そこからCMがプランニングされるというプロセスが多くなるだろう。「広告クリエイティブ」といえば、すなわちCMプランだというスタンスも、今後アプローチの仕方が幾分違ってくるはずだ。
 クロスメディアという作業は、単にキャンペーンプランニングをWebを含めた多層構造にするということだけでなく、広告会社におけるキャンペーンプラン開発プロセスも構造的に変革を求められる。

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