AD FILES 2006.10/vol.9-No.7

勝利の喜びと感謝の思いを伝えた二連版カラー広告
本田技研工業 日本営業本部 宣伝販促部 ブランド・企画ブロック チーフ 松田 年史氏
 1992年の優勝以来、実に14年ぶりに72回目の勝利を挙げたホンダレーシングF1チーム。8月11日の朝刊には、「夢こそが、私たちのエンジンだ。」という真摯なメッセージと共に、F1マシンが大きくクローズアップされた二連版見開き広告が掲載された。黒をバックにしたシンプルな構図から、ホンダのF1参戦の歴史の重みが静かな迫力とともに伝わってくる印象深い広告だ。
 「ホンダには、長年F1に挑み続けてきたという歴史があります。他社にはないホンダにしか語ることのできないチャレンジ精神を、絶好のタイミングで企業メッセージとしてお知らせしたかったというのが新聞広告の狙いです」と語るのは、日本営業本部 宣伝販促部ブランド・企画ブロックチーフの松田年史氏。
 「決して『優勝しました』ということを大々的に言いたかったのではなく、『ホンダって、そういうワクワクする会社なんだ』と感じ取って頂きたいという思いで作りました。勝てなかった間もずっと応援してくださった方を含め、すべての皆さんに、感謝の気持ちを伝えたかったんです」

企業精神を語るコピー

 今年の4月から、モータースポーツシーンを描いたテレビCMでも使われているのが、「夢こそが、私たちのエンジンだ。」という心に響くキャッチコピーだ。夢に挑み続けるという企業スピリットを端的に表しており、いかにも創業者の本田宗一郎氏の語録に出てきそうな“ホンダらしい”コピーである。
 「実は、福井社長の『挑戦することが我々のエンジンだ』という社内報の発言を広告のコピーとしてリライトしたものなんです。“エンジン”という言葉は、F1マシンのエンジンと、我々の原動力、魂のようなものを表しています」
 8月6日の優勝を、8月11日朝刊の二連版カラー広告で報告するという早業だったが、実はこの企画は2年前からずっと温めていたものだった。
 「優勝したらこの企画でいこうと、宣伝関係者もF1開催のたびに臨戦態勢でスタンバイしていました。ついに優勝の連絡が入り、広告を出せると決まった時には、宣伝の関係者の間にも妙な連帯感みたいなものが生まれましたね」
 優勝が決まると「すぐにでも皆さんにお知らせしたい」という社内のムードは一気に高まったという。徹夜で広告内容を校正するなどの努力の末、当初の想定よりも早く、優勝からわずか5日後というスピード掲載にこぎつけた。「日の目を見てよかったです」と松田氏。
 さらに、見開き30段カラーという大きく迫力のあるスペースを使ったことにも、ホンダの熱い思いと素直な感謝の気持ちが込められている。
 「とりあえず速報性を重視したモノクロ広告で、『勝ちました』と報告する方法もあったかもしれません。でも、F1はホンダにとって特別なものですから、感謝と喜びの気持ちの大きさを素直にスペースや表現にも出したかった。また、ホンダが歩んできた長い道のりを上手に表現し、しっかりと伝えるためにも、新聞広告が最適だと考えました」
 反響はどうだったのだろうか。本誌の読者モニターからは「チャレンジを続ける偉大さ、夢の大切さ、それを原動力にして発揮できる力の大きさを感じた」「ホンダの夢がエンジンに表現されている」など圧倒的に支持する多数のコメントが寄せられた。
 また、今回は、新聞広告と同じデザインのポスターを作って全国のディーラーにも送っている。そのポスターが欲しいというユーザーの声が相次いだため、急きょパソコンの壁紙としてダウンロードできるようにして対応したが、「掲載から1か月たっても問い合わせの電話が入っている状況です」と松田氏。海外のブランチからも、広告のビジュアルを使わせてほしいという問い合わせが相次いだという。

“ホンダらしさ”が基準に

 1964年のF1初参戦から40年を超える歴史は、今回の新聞広告にも1つ1つ記録されているが、その中で常に独自のスタイルでレースに挑み続けてきたという事実こそが、ホンダブランドを確立した1つの要因になっていることは間違いない。「ホンダといえばF1」とイメージする人も多いが、当初から企業のブランディングを目的としてF1レースに参戦したわけではない。
 「ホンダには、あまり商売と関係のないところでも頑張るような企業文化があります。ひとつの夢に向かってF1活動を続けてきたことが社風になり、企業ブランドに貢献するものになったと思います」
 F1以外にも、2足歩行のロボット『アシモ』や、小型ジェット機『ホンダジェット』の開発など、一見、自動車メーカーとは関係がないような活動にも積極的に挑戦し続けている。「このような我々すべての活動がホンダのブランドを作っていると考えています」
 F1への熱き思いが込められた今回の新聞広告は、まさに“ホンダスピリット”が十分に表れた大作と言える。そこから伝わってくる企業としての真摯な思いもまた、読者の中にブランドとして残っていくだろう。
 「我々が広告を作る時に意識するのは、それが“ホンダらしいかどうか”です。明確な物差しがあるわけではないのですが、でもなんとなく、社員の誰もが納得するようなモノなんです」

8月11日 朝刊
読者モニターのコメント
「まるで競技を終えた後、静かに勝利の喜びをかみしめているかのようなレーシングカーの写真。何かを売るためなどでなく、応援してくれた人たちへの感謝を表したこの広告は、好感がもてる」 (32歳 主婦 女性)
「あくなきF1への熱い取り組み姿勢が伝わる格好いい広告である。初参戦からの歴史の重さがよく伝わってくる。利益も重要だが、エンジン技術にかける会社の思いが凝縮されているように感じた」 (40歳 団体職員 男性)
「暗闇の中に浮かび上がるレーシングカーの見開きの写真に圧倒され、HONDAのチャレンジし続ける姿勢がすてきだな、ロマンだなと感じた。The Power of Dreamsってかっこいい言葉だなとつくづく感じた」 (42歳 主婦 女性)
「カッコイイですね。さすが世界のHONDA。感動しました。夢と感動がたくさん伝わってくるすてきな広告です。ずっと応援していきたいと思います」 (50歳 会社員 女性)

(原)
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