こちら宣伝倶楽部 2006.9/vol.9-No.6

夕刊の再生と広告の機会
イラスト 気がついてみたら「夕刊」に迫力がない。新聞社としても経営的に好ましくないはずだが、まねられるような改良策はでていない。さっさと夕刊をやめてしまった新聞社もあったりして、本当は右へならえにしたい社もあるはずだが、歴史やプライドが簡単にそれを許さない。
 インターネット広告が急成長して、4媒体の時代から5媒体の時代になり、メディア設計がおもしろくなりそうなのと同様、夕刊の活性化が新聞全体の魅力の倍加につながるはずだ。

夕刊離れの理由のあいまい

 まず部数、読売新聞の場合、全国レベルでは朝刊の39.37%が夕刊の実力、東京本社版だけでみると、夕刊は朝刊の37.86%とまだ落ちる。同様に大阪本社版でみると53.05%とこちらははねあがる。なにかと計算高いイメージがあるのに大阪は義理堅いと思ったら大阪の方が東京より平均的に通勤時間が短いので「家でゆっくり夕刊を読む時間」があるからだという意見がある。つまり夕刊をとらない理由のなかに、疲れて帰ったときもう活字は見たくない、頭が新聞をゆっくり読むモードになっていないというのがある。しかしその習慣や習性が今後の新聞離れや、活字文化との接点を弱くしていくことにつながる可能性があり、どこかで歯どめをかける必要がある。
 夕刊をとらない、読まない理由というのはいつ誰に聞いてもあるようでない。これがはっきりすればそれを改良、改善すればよいわけだがそれがはっきりしないから、新聞として「新聞の、とくに夕刊のクリエイティブ」を考えていくしかない。そのことへの気づきと、周囲とくに同業他社の様子、反応ながめをしない、業界リーダーシップの有無が勝負をきめる。
 夕刊離れの事情と理由、その主なものは「読む時間がない」。主婦だって忙しいし、朝刊をもう一度ゆっくり読むだけで精一杯、「疲れて帰って細かい活字はイヤ」それよりテレビをボヤッと見るだけ、だからボヤッと見られる番組が愛される。「チラシが入っていない」という不満も結構強い。広告主協会の調べでは大体いつも主婦は新聞本紙より、はさみこまれるチラシに目を通す時間の方が長い。「ゴミが増える」と初めから捨てることを計算する女性もいる。ゴミの分別や処分に頭を痛める働く若い女性にこの意見は多い。夕刊をとらない理由の上位に「節約のため」というのはこない。夕刊は女性読者をいかに囲いこむかがひとつのポイントだ。


朝刊の緊張感 夕刊のリラックス

 「読む時間」がないは「わざわざ時間をかけるほどでも……」という本音を秘めている。チラシは販売店にたずねてみたら、前日の夕刊にいれる方が作業はラクという答えが返ってきた。もしそうだとしたら夕刊にもチラシは可能であり、営業時間を長くする傾向のスーパーマーケットなどでは、夕刊のチラシだけで知らせるサービスも可能になる。折り込みエリアに働く女性の職場エリアをマークして、帰宅直前の動機づくりも研究されてよいだろう。
 夕刊で突然知らされる翌朝の「朝市・目玉市のお知らせ(クーポンつき)」も工夫できる。その日のことをその日の朝に知らされるより、前の日の夜に知らされる方が余裕があるし、期待感を動機につなぐこともできそうだ。広告でも「本日新発売」と「明朝新発売」では印象は違うし、広告の作法も別ものになってリアリティーを増す。朝刊の緊張感に対して夕刊にはリラックスが似合うし求められる。夕刊の読者は女性と子供がメーン、そのサブに1日の働きを終えたちょっと疲れ気味のビジネスマンをイメージしなおせばよいだろう。強化したいのはエンターテインメントとスポーツ、ファッション、美容、グルメ、レジャーであり、食育や子育ても課題であり、主婦のためのわかりやすい経済学も新聞らしいスタイルで築きあげてほしい。
 地域欄の充実、読者特派員の育成、新しいスタイルの投書欄の研究もほしい。どこかに目次があってもよいし、ラジオとテレビ欄は同じページにいれ、明日のゴールデン・タイムなどという欄が夕刊にはほしい。寝る前に読んで聞かせる「今夜の童話」は子育てに効くはずで、この欄の広告主はすぐに見つかるはずだ。若い人には漫画が人気で、日替わりで有名作者まわりもち企画がいいという。時差を計算した海外ニュースも夕刊の目玉になるし、1週間分の「ニュース・ダイジェスト」もほしいといわれる。

夕刊は朝刊とは別もの

 「各社新製品トピックス」もコラム広告として検討してはどうか。取材して第三者が客観的に紹介する新製品ニュースは興味がある。
 夕刊をおもしろくする最大の思いきりは、夕刊を別紙名にしてしまうことだ。束縛が自由になり、タブーがフリーになり、思いきった刷新が早くなる。サイズだって朝刊に準じることはないし、読者はまったく別人と考えることもできる。都会では「起床して夕刊。朝刊を読んで就寝」という生活をする人もいる。だとしたら夕刊はとるけど朝刊は不要という人もいるはずで、夕刊だけでもOKという人気紙がつくれたら広告もまたおもしろくなる。「お疲れさま、今夜は熱燗ですね」など夕刊にこそふさわしい。
 夕刊の人気記者も育ってほしいから、記名記者を増やしてほしい。固有名詞のあるユニーク記者が新聞をおもしろくする可能性がある。
 夕刊は自宅でなく勤め先に届けてほしいという声もある。販売システムの研究がいるし、自宅に配達してもらうにしても、夕刊の勝負によっては朝・夕刊別々の購読というスタイルも読者の方で作っていくかも知れない。
 もうひとつ夕刊の再生に欠かせないことは、デザイン力を上げること。紙面の印象を一気にあかぬけさすことであり、場合によっては天地そのまま、左右3センチほどカットのスマートなサイズを研究してもよい。印刷技術の向上で紙面改善されるたびにカラー写真やさし絵が増えるが、かえって低俗な印象が強くなり、新聞の気品がそこなわれていくことを、一部の読者は心配している。レイアウトも目もさめるものに変身させ「夕刊があかぬけた。カッコよくなった」といわれるようにしてほしい。
 これらのことが夕刊の新しい読者像をつくり夕刊との接点事情をきりひらいていくはずで、夕刊の広告が、そして新聞広告そのものがおもしろくなっていく可能性につながっていく。夕刊の方が好きという層はきっとでてくる。

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