ojo interview 2006.9/vol.9-No.6

大島 征夫氏
大島 征夫氏

 サントリーオールド「恋は、遠い日の花火ではない。」、JR東日本「その先の日本へ。」など、時代を象徴する数多くの話題作を世に送り出してきたが、意外にも代表作はないと言い切る。
 「いくら評判が良かった広告でも、あれが100%の正解だったとは誰にも言えません。だから実際に掲載されたり、放映される時は、いつも怖くて緊張します」
 キャンペーンの責任者として、広告ターゲットの気持ちに沿ったコミュニケーションを作る。最も有効な立ち位置を見つけ出すのは、「本能と経験値とが一緒になった、ノウハウに近い直感ですかね」。
 昨年五月、電通を定年退職して立ち上げた新会社は、出資者(電通、大島征夫、フロンテッジ)の頭文字をつなげて「dof」と名づけた。
 「実は、英語で“doff”とつづれば、脱ぎ捨てるという意味になるんです。肩の力が抜けてて、ちょうどいい感じだなと」
 独立後も、レクサスなど、大人に向けた上質な広告を生み出す一方で、仲間由紀恵らを起用したau by KDDIのように、若者向けのヒットCMも手がけている。
 「僕らはモノへの思い入れが強い世代で、最近の成熟した若者の感覚とは違います。だから、時には広告に接する人の気持ちになり切れる若いスタッフに任せることも大事」と、方向性を指し示すディレクション作業に徹する懐の深さも見せる。
 最近の広告は、効率だけを効果として評価する傾向が強まっているという。
 「でも、これからは効率主義だけではとらえられない本質的なコミュニケーションの深さが問われる時代になっていくと楽観視しています。ある程度の理性や理解力を持つ読者に伝えるという前提に立てば、新聞広告は他のどのメディアよりも、企業や商品の本質を深く消費者の心に届ける力がありますよね」
 昨年は「ジャイアンツブランド」キャンペーンを手がけたが、今の巨人の話になると表情が寂しげに。
 「本当は長い目で見たいんですが、やっぱり巨人が強くないと面白くないよね」

文/横尾一弘  写真/はやしたつお

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