CrossMediaの必然性 2006.9/vol.9-No.6

「全体最適化」の考え方
 企業のWebサイトをマーケティング装置として、そこのパフォーマンスを挙げるためにマス広告を含めたキャンペーンデザインをする、インタラクティブをコアとしたクロスメディアは、キャンペーンの成果を常に数字で把握しようというものである。
 Webサイトのなかの、特定のユーザーアクションをもってキャンペーンのひとつのゴールとしようというのは、最終的にそこにトランザクション(商品やサービスの購入)がかかわるからで、またはWebでのユーザーアクションそのものがトランザクションということもある。むしろそうした広告主が従来ネット広告を駆使して、見込み客誘導を図ってきた。Webで最終購買行動までを見渡せる企業は、広告効果の追跡分析で、ブランディングから顧客誘導活動、トランザクションまでを一貫して把握できている。
 つまり、どんな広告によって誘導されて購入した顧客が多いか、また客単価はどうか、リピート率はどの程度か、が分かる。
 これは、従来のマスマーケティングではほとんど有り得ないことだ。マスマーケティングでは欧米でそうであるように、ブランディングとメディア戦略などコミュニケーションに関することは「Above the Line」、販売促進などのプロモーション関連は「Below the Line」として、担当する部署やアウトソース先の代理店も分けてきた。
 日本でも、宣伝部と販売促進担当と営業販売は当然のように機能分化している。そしてそこには部分最適というか、その部署のミッションにおけるマーケティングコストの最適化が図られる。マスマーケティング時代には当然だったこの考え方は、Webによる一貫性の高いマーケティングが浸透してくると、必ずしもこうした従来のやり方だけでないことが分かってくる。
 ある企業が、新規の会員獲得にネットの施策を試して、最終的にネットのアフィリエイトが最も1件あたりの獲得効率が良いことが分かり、マーケティング予算をすべてアフィリエイトに割り振った。一方、ある健康食品通販会社は、ダイレクトマーケティング活動の知見が豊富で、マス広告だけでなく当然ネット広告も様々な手法を試した上で、アフィリエイト広告は単純な1件あたりの顧客獲得単価は安いが、「一見さん」が多く、客単価も低いことを知っている。従来、どんな広告で集客を図った顧客が、どの程度の客単価になり、どの程度リピートしているか把握しているからだ。かれらは広告部門、販促部門、と分けてそれぞれの部門のミッションにおける最適化、つまり部分最適にはまってはいない。常に全体最適のマーケティングを行っていると言える。従来のマスマーケティング型組織は、せっかくWebマーケティングを取り入れているにもかかわらず(把握しようとすれば、広告手法によって会員の購買活動状況が分析できるにもかかわらず)、いまだに部分最適型の思考から抜け出せない。
 「インタラクティブ・クロスメディア」は、マス広告やリアルなプロモーション活動も行うが、それらはWebにおける特定のユーザー行動に収斂させるための活動であって、その客観的(量的)把握が常にされるという意味で、全体最適化を目指すことになる。クロスメディアは、従来、それが最終的にどんな効果を生んだかを評価しない広告とは少し違ってくる。
 もちろん組み合わせの妙がモノをいう(相乗効果を生む)のがクロスメディアである。それぞれ個別の活動の単純評価にはならないが、その企業、そのブランドにとって、どういう組み合わせが高いパフォーマンスを生むかは、知見をためて、ベンチマークをつくっていくほかない。早くこうした知見をためた企業が、次の時代の勝者になることだろう。
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