Creativeが生まれる場所 2006.9/vol.9-No.6

ダイキン工業 新聞五紙を並べて「ぴちょんくん」パノラマ
山中貴裕 氏  「しつどーん」は、ダイキン工業がこの春夏に展開した家庭用エアコンのキャンペーンのキャッチフレーズだ。一度聞いたら頭から離れないインパクトがある。そのコピーライターが、大広の山中貴裕氏だ。6月に掲載された新聞広告は、全国紙5紙を並べると、キャラクターの「ぴちょんくん」の気分そのまま、なんとものどかな一枚の絵になる。ユニークな発想はどこから生まれてくるのか。山中氏に聞いた。

――山中さんがダイキンの担当になったのは?
 昨年の秋の空気清浄機「ロボぴちょんくん」からです。それに続いて、今年のエアコンも担当させてもらうことになりました。

――春から始めたキャンペーンでは、子どものお相撲さんを使っていますが、新聞広告はキャラクターのぴちょんくんがメーンですね。

 あくまでもエアコンの「うるるとさらら」の販促広告ですが、新聞ですから、それがイコール企業広告としても機能させたいと思ったんです。全国紙5紙に掲載というのも、めったにない機会ですし。販促目的だけなら、テレビCMでやっているお相撲さんを使ったキャンペーンと連動させた方がいいのですが、企業広告としては企業のキャラクターである「ぴちょんくん」を使った方がいいだろうという考えです。
 もともと「ぴちょんくん」は遊び心があるキャラクターで、ファンも全国にかなりいる。反面、「この商品を買ってください」という押し出しの強いキャラクターではない。水玉の精なんですけど、なんかどこからやって来たのかもよく分からないし、言葉をしゃべるのかもちょっとはっきりしないしみたいな、割とツッコミどころの多いキャラクターなので、そういう『ゆるさ』や『遊び心』を生かした表現てないかな?と思ったんです。で、全国の5紙で、つなげて1枚の絵になるというアイデアを思いついて、「そういう新聞広告ってなかったよね」とスタッフの会議でポロッと言ってみたんです。

「しつどーん」という発想

――スタッフの反応は、どうだったんですか?
 「おもしろい!」「実現したら、すごい」という意見と、「確かにあんまりないと思うけど、それって何の意味があるの?」「実際に並べる人がいる?」という意見が同時に返ってきましたが、ダメモトでプレゼンしました。結局、ダイキンさんもノリのいい企業なので、「新聞でこういうの見たことないし、そういうのに挑戦するというのが、ダイキンの若々しい企業イメージとも重なって面白いんじゃないか」ということになったんです。

――反響はどうだったんですか。
 CMとの相乗効果もあって、ブログでも結構取り上げてもらったりしました。最初からネットで話題になるというのは狙いとしてあったんですが、学生さんのブログには「大学の図書館に行って新聞を並べてみます」という書き込みもありました。実際に5紙並べてくれた人は少なかったと思いますけど、話題にしたくなる広告ができたかなと思います。
 「しつどーん」という言葉で検索すると、かなりヒットする。新聞も、ちょっと視点を変えて媒体特性を生かして新しいことをやれば、意外ともっと伝わる方法って、まだまだあるのかなと実感しましたね。

――その「しつどーん」ですけど、「湿度」のことですよね。
 それ、いろんな人に聞かれるんですよ(笑)。これも「ぴちょんくん」と関係してるんですけど、キャラクターの雰囲気を生かしたキャッチフレーズって何だろうと思って考えたものです。ダイキンのエアコンは除湿はもちろんですが、加湿もできるところが特長なんです。最初はひらがなで「しつど」だけでいいかなと思ってたんです。普通だとあり得ないですけど、「ぴちょんくん」が築いてきたいい感じの「ゆるさ」みたいなところがダイキンにはあるから、許されるかなと思った。
 ダイキンさんも、さすがに「しつど」だけではゆるすぎるかなと(笑)。最終的に消費者が決断する店頭で「ドーンと目立つ言葉が欲しいんだよ」と言われたので、その場で「しつどーん」ってどうですかねって(笑)。

――そういう「ゆるさ」というのは、計算してつくるものなのですか。

 「思いつく」という点では偶然もありますが、それが企業にとってふさわしい言葉かどうかは徹底的に検証します。広告コピーは文学などと違って、人々の日常生活にお邪魔する言葉なので、できるだけ「日用品」というか「遊び道具」的なコピーにしたいと思っています。オモチャにしてもらえるくらいの言葉の方が、世の中に広がるスピードが速いと思います。

生理で感じてくれる言葉

――大阪と東京では、広告の作り方に違いがある?
 「理屈はいらん」というところはありますね。考えるより思いつけ、という感じ。きれいなコンテをつくる時間があるなら、もっと企画を考えてくれ、手書きでいいんだよって。
 案を選ばれるときの基準も、生理的に面白いかどうかで選ばれている。まじめに考えたものほど面白くないことを経験的に知っておられるんだと思うんです。
 だから、普通の企業ならダイキンのエアコンも「夏は除湿、冬は加湿で快適湿度」、これがキャッチフレーズになると思うんです。でも、広告上手なナニワの企業は、そこで納得しない。それを人が生理で感じてくれるか、普通のおばちゃんや子供がまねしてくれたり、話題にしてくれたり、バカにしてくれるか、そこまで機能するコピーを求められる。そういう意味では、ハードルは高いと思うんです。自己満足の表現では許されないところがありますね。

――クリエイターとしては、やりがいがある?
 コピーライターとしてのやりがいはすごくありますね。今はデザインの時代だと言われますが、僕自身は言葉で勝負したいと思っているので。そういう意味では、大阪は僕にとってはいい場所だと思うんです。

6月29日 朝刊

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