立ち読み広告 2006.7・8/vol.9-No.4・5

誰がために絵本は買われる!?
 最近、絵本・児童書の売れ行きが好調だという。少子化なのになぜ? と思ったら、「少子化だからこそ」という声が返ってきた。子どもの数が少ないので、かえって一人にかけるお金が増えているらしい。だがそれだけではない。絵本・児童書の読者層がかつてなく広がっているのだ。
 「若い男性のお客さまが増えました」と話すのは都内の児童書専門店。大学生や独身サラリーマンが1人で来て絵本を買っていく。最初は「プレゼントですか」とラッピングの有無を尋ねていたが、自分で読むために買っていく人が圧倒的に多い。「大人の男性は絵本を読まない、絵本はプレゼントのため、という偏見を改めなければなりませんね」と書店員は言う。
 
絵本には適齢というものはない

 6月6日の朝刊には「取り戻そう、やわらかい感性と想像力〜いま、大人にすすめる絵本〜」と題した全面広告が載った。上半分はノンフィクション作家の柳田邦男と歌人の俵万智との対談。下半分は「柳田邦男氏がいま、大人にすすめる絵本29冊」。文字が多く、広告としてはいささか地味かもしれないが、中身は読みごたえがある。
 「絵本は人生で三度読むべきもの」というのが柳田氏の持論。柳田氏は1999年から大人に絵本をすすめる運動を提唱している。それにこたえて、読売新聞は2003年から柳田氏とゲストによる対談をフィーチャーしたキャンペーン広告を毎年掲載している。ちなみにこれまでのゲストは女優の内山理名、女優でエッセイストでもある中井貴恵、詩人の谷川俊太郎の各氏だ。
 柳田氏のいう「三度」とは、子どものとき、子育てのとき、そして人生のなかば以降のこと。ただしこれは象徴的な意味で、ようするに絵本は年齢に関係なく赤ん坊からお年寄りまで読めるものだ、ということである。

圧倒的なコストパフォーマンス

 私は年に一度、学生に都内の書店を案内して回っているが、学生たちがもっともよく反応するのは児童書専門店だ。学生たちは子どものころ読んだ絵本を手に取って歓声をあげる。本を手にした瞬間、10数年の時間を一気に飛び越えるらしい。初版から半世紀たっても同じ姿で売られている本が多い、というのも絵本・児童書の特徴だろう。
 絵本を手に取って驚くのは、その圧倒的なコストパフォーマンスのよさだ。文章もさることながら、1枚1枚の絵が素晴らしい。切り取って額に入れようかしら、などと思う絵がたくさん詰まっている。装丁も堅牢なハードカバーがほとんどだ。なにしろ子どもは同じ本を何十回も繰り返し読むから。これだけ手間暇と心を込めてあって、ほとんどの絵本は1,000円台なかば。これは絶対に安い。
 老人ホームでも絵本が人気だという。認知症などで老人の知力が衰えるから、ということではない。人間の感性の奥深いところに訴える力が、絵本にはそなわっているのではないか。柳田氏もこの対談のなかで「1冊の絵本が自分に問いかけてくるような瞬間があるのは、絵本の醍醐味ですね」と語っている。大人も、ではなく大人こそ絵本を。
 この広告に唯一不満があるとしたら、それはカラーでないこと。せっかく美しい絵本が29冊も紹介されているのに、白黒の小さな写真ではもったいない。

6月6日 朝刊
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