こちら宣伝倶楽部 2006.7・8/vol.9-No.4・5

広告をよくするための6ツの「P」と2ツの「S」
イラスト マーケティング機能のひとつとして、流通における確かな役割のかなめとして、広告の再認識と、それぞれの広告主企業のなかでの宣伝部の新しい信頼のために、広告そのものの水準と評価を上げること、凛とした存在感を示すことが急務になっている。それは担当部門としての宣伝部のわきまえも大事だが、もっと大きな全社レベルのフレームでこの問題と取り組むことが大事になっている。会社が動き出す前に宣伝部が動き出さないと宣伝部は弱者になる。

満員で乗り心地の悪いバス

 マーケティングで大切な「4P」とか、プロモーション政策で大切な「4W1H」というのがあるが、ここでは広告の再認識でメスをいれたい「6P・2S」について考えてみよう。
■PRODUCT
 広告する「もの」と「こと」が、わざわざ広告するにたる意味や強さをもっているかどうかと、広告して逆に軽率、安易に思われてしまわないかということや、それに経費をかける必然性があるかどうかの見極めが大事になる。
 メッセージの内容に説得力があり、魅力をもっているか、感動を呼ぶ約束とユニークも保証されていてほしい。単純に「新製品」というだけでは横並び発想からの突出は難しい。その元になる独創性や自信、気合いに加え、市場のどの部分にはいりこみ、いかなる存在感を示すのか、経営の決意に裏うちされた気迫のコンセプトがあるかどうかの全社確認は大切だ。
■PRIORITY
 メッセージの優先順位と必要性で照合し、雑情報を切り捨て、必要情報を発掘しなおす仕事を再点検すること。これをきちんとしないから広告がやたら満員で乗り心地の悪い乗り合いバスになってしまう。最も優れていて、他者にひけをとらない象徴的な1番情報をしぼりこむことには、勇気と決断力がいる。必要以上に社内調整しない覚悟つきの自信がいる。外部のクリエイターたちはそれのできる宣伝部長との出会いを待っている。メッセージがどうしても多くなってしまう場合は、メディア計画と表現の企画を緻密にたて、メディア別の知らせるべき情報の順位やウエートを再設計することになる。


知らせて 気づかせて わからせる

■PASSION
 「広告の仕事」にバランスのとれた熱い思いを持っていること。片よってクリエイティブのことだけに関心があるとか、特定のメディアに力点がかかりすぎるなどというのは駄目、小さな打ち合わせでも大きなミーティングでも気合いは同じ、からだで意気ごみを示せば人は必ずついてくる。仕事が一段落ついても頭もカラにせず、動きや変化、展開を見て必要な手をうつことを手ぬきしないこと。スケジュールの消化だけが仕事だと思うのは下請け根性であり、広告の仕事が全体のリーダーシップをとることから遠ざかることになる。好きになってのめりこんで、おもしろくなって苦しむ。それがこの仕事だ。
■PROPOSAL
 ヒントになって広告の対象者や生活者に一歩はいりこむ。その情報が役にたつことや、こういう発想をとりいれると生活はどれだけすてきになるかの提案と、その説得力をもっているかどうかだ。広告のメッセージというのはともすれば広告主の叫びが中心になって、広告主本位の事情が前面にでてしまいやすい。組織内を上手に泳ごうとする広告担当者や、なんとかアカウントに恵まれたいとだけ念じているような広告会社やクリエイティブ担当とがまともに組み合わさると、広告はいつまでたっても説得力がつかない。摩擦を恐れぬ自信の知性を失わぬこと。
■PROFESSIONAL
 「仕事」と「仕事ごっこ」はちがう。その見極めは難しい。しかし1週間ほどつきあって観察していれば、その人が腰をすえて仕事をしているか、小手先と口先だけで、単に要領よくたちまわって仕事のようなことをこなしているかどうかはわかるものだ。
 専門にふさわしい知識や経験がみごとに生かされ、知恵の肉づけをどんどん進め、仕事に終わりがなく息をぬかないしつこさがあるかどうかでも差がつく。とにかくだまって勉強し、その蓄積を知恵にかえ、創意にみちた向上心をもたぬ者は、広告や宣伝などという責任の大きな、重い荷物をかつごうなどと思ってはいけない。

統合と総合のためのタクト

■PROPAGANDA
 仕事は個々に考えてつきつめていくと孤独なものだ。しかしそれを共同化し、協調して組織的に行うようにしなければパワーにはならない。マーケティングの統合と総合が宣伝の仕事では不可欠であり、個々はしっかりしているのに、束ねるとつながらないケースは多い。名演奏家をタクト1本で動かす人望とマネジメント力のあるディレクターがいるかどうか。組織人としてその人は適正かどうか、たゆまず一段上の勉強をして己に磨きをかけているかどうかが問われる。広告と広報、広告と販促、広告と営業の人間関係がぎくしゃくするのは問題外だ。
■SPEED
 スピードといえばてきぱきと早くやりなさいということだけではない。ものには潮時というのがある。タイミングを逃してはいけないということも、大事なスピード意識だ。
 まかせるべきはまかせる。まかせたら温かく見守る。まかせられたら自分をレベルアップして期待に応える責任をもつこと。形式的すぎてむしろ弊害の方が多い稟議や決裁のシステムにもメスをいれること。責任者の判断力や決断力はその人の日々の学習力に比例する。そしてまた、広告はニュースでもある。タイミングのずれたニュースは極端にその価値を失ってしまう。
■SINCERITY
 大きくて強い会社が立派とはかぎらない。企業や団体の良識や良心を疑うような事件が続き、その都度広告の値うちがぶれ、信頼が薄くなり、広告から真実という文字が逃げていく。
 いま改めて、誠意、誠実、正直、まじめなどということが企業のキーワードに強く求められるようになった。かたくなな節操、無器用なくらいの律義さ、バランス感のとれたよりよき社会人としての姿勢などが、広告や宣伝の仕事をする人のまわりに強く求められる。決して浮ついた姿勢でこの仕事にとり組んではいけないことはたしかで、精神棒を見失わないように。
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