From Overseas - NewYork 2006.6/vol.9-No.3

教育と新聞、若年読者獲得への地道な努力
 旅行などでしばらくの間、新聞の購読を中止しなければならない場合、アメリカでは「留守中に配達されない新聞を寄付しませんか」と聞かれるケースがある。寄付に応じた場合、新聞は教育機関に寄付される。ニューヨークタイムズに掲載された全ページ広告によると、配達を止めた期間の購読費が寄付金となって1ドルあたりで4部の新聞が各教室に届けられ、それが授業などで生かされているという。
 日本ではNIE(Newspaper in Education、「教育に新聞を」の略)に組織的に取り組み始めたのは80年代末のようだが、アメリカでは既に70年以上前から教育の現場に新聞が活用されている。教育の現場に初めて新聞を提供したのは前出のニューヨークタイムズで1932年のことだという。同紙のウェブサイトによれば、当時のニューヨーク市の教員たちが授業で新聞を活用したいという要望を出したのに応じたのがきっかけで、今では全米1,500の小中高校、1,200の大学で配布されており、教育機関向けの部数も10年前に比べると3倍以上も増大しているという。
 現在、ニューヨークタイムズでは、教育の現場でさらに新聞を活用してもらおうと、「Learning Network」と呼ばれるプログラムで大学生以下を対象に授業で使えそうな記事とそれに対応した教員用のマニュアルを特設のウェブサイト上で公開している。ここには過去の記事も含めると700以上の記事がストックされており、歴史や科学など科目別に検索することが可能となっている。
 さらに、大学生とその教員には購読料を通常の半額以下とするサービスが用意されているほか、通常のニュースサイトとは別に、映画、ビジネスなど彼らにとって関心の高い分野にニュースを再編した「College」という名の特設サイトも設けられている。
 一方、ワシントンポスト紙では「Kids Post」という子供向けの紙面を2000年4月に立ち上げ、土曜日以外の連日にわたって掲載している。
 記事は8〜13歳が対象で、動物や音楽、クロスワードパズルをはじめ子供たちにとって関心の高い話題を中心に展開されている。もちろん、ニュースも掲載されており、子供たちにとって理解しやすいようになるべく平易な単語を用いた上で、ひとつの記事あたりの単語数も120程度に制限している。
 日本でも最近では、NIEの場で活用してもらおうと特集紙面を組み、子供たちを対象とした面を定期的に設けているケースが出てきているが、アメリカでは「Kids Post」のようにほぼ毎日にわたって子供たちを対象にした面を設けている例があるなど、より盛んなようだ。
 ここアメリカでも日本同様、若者の新聞離れが強く指摘されている。また、その問題を解消するための手段としてフリーペーパーを発行することがこちらでは断然脚光を浴びていることも事実である。
 このような状況では、今回ご紹介したニューヨークタイムズやワシントンポストの学生や子どもを対象にした取り組み方は、成果が出るまでに時間がかかる、地道な努力に見えるかもしれない。
 だが、ワシントンポストのように子供たちが毎日接することが出来る紙面があれば、子供たちは自然と新聞を読む習慣が身に付く可能性は高くなるであろう。
 「Kids Post」に接した子供たちの多くが10年後に購読者となっているのか、よい結果が出ることを大いに期待したい。
 
4月24日 ニューヨークタイムズ紙 5月4日 ワシントンポスト紙
(5月9日)
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