ojo interview 2006.5/vol.9-No.2

国井 美果氏
国井 美果氏

 「一瞬も 一生も 美しく」。昨夏、鮮烈に登場し、瞬く間に世の女性たちの共感を呼んだ資生堂の新しいコーポレートメッセージを手がけた。
 「社会全体だけでなく、一人一人に向けて、言葉の力で、どれだけ深く企業の思いを届けられるかという挑戦でした。クライアントと志を一つにできたうれしいお仕事で、コピーライターを続けていて、本当に良かったと思いましたね」
 “就職氷河期”真っ只中の1993年、本屋で「大貫卓也全仕事」に出会った。目指す道を広告業界に定め、言葉にかかわる仕事に打ち込みたいと思ったが、「自己PRが苦手で。面接では自分の心を通過していない型通りのことばかり喋ってしまい、全滅でした」。翌年、ライトパブリシテイは経験者の募集だったが、「図々しく応募しました。でも、気負わず、構えず、正直に熱意を伝えられたのが良かったのかな。ご縁ですかねえ」。
 今、コピーを書く時に、広告主の狙った到達点に届かせるだけではなく、自分にウソをつかないことを心がけている。
 「自分でさえグッとこないことを書いたって、人の心は動きませんから。仕事を通すだけのために思ってもいないようなコピーを書いた苦い経験がありますが、そういう道は二度と通らないようにしようと決めたんです」
 言葉を書くことや、本を読むことは小さいころから好きだった。本屋は「前向きな気持ちになれて、脳を温めることができる」大好きな場所。愛読書の一冊に、若き日の小澤征爾が書いた「ボクの音楽武者修行」を挙げた。ヨーロッパに単身旅立ち、帰国するまでの3年間を記したすがすがしいエッセーだ。
 「学生のころに持っていた『ここからどこにでも行けるんだ』という精神的な自由さと『これからどうなるんだろう』という恐れのような緊張感は、どちらも一生大切にしていきたいなあと思います。最近は、尊敬していた憧れの人と組んだお仕事もできて、ゾクゾクするし、すごくうれしいですね」

文/横尾一弘  写真/はやしたつお

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