CrossMediaの必然性 2006.5/vol.9-No.2

クロスメディアの効果実証
 「クロスメディア」というワードが世の中に出てきたのは、アメリカのネット広告団体IAB(Interactive Advertising Bureau)が2000年から始めた「XMOS」(クロスメディア・オプティマイゼイション・スタディ)と称する効果実証実験プログラムあたりからである。
 XMOSは、数十社の有力広告主が参加して、従来のマス広告とネット広告の組み合わせ方の最適化、つまり同じコストで効果を最大化するためのベンチマークづくりをした非常に規模の大きな効果実証調査である。各広告主はマーケティング目標が相違するなか、それぞれの目標(例えば、マクドナルドであればブランド想起、Doveは購入意向、クリネックスはブランドイメージ、フォードはセールス)の各指標を向上させる効果が、ネットとの組み合わせ効果として獲得できるかが試された。
 手法は、まずネット広告の接触者をつかまえることから始まる。ネット広告の接触者はネットユーザーが使うブラウザを特定することで行う。このブラウザ特定という技術が従来のメディア接触状況調査と圧倒的に違うところだ。
 ネット広告の配信では、ユーザーのブラウザが広告掲載面にアクセスすることで、広告配信サーバーに広告画像のリクエストをかける構造になっている。この時、広告配信サーバーはユーザー個々のブラウザにID(個別認識番号)を振っている。どこの誰かという個人情報は全くないが、同じブラウザがどんな広告を何回見たかが全部把握できる。ということは特定の広告を見たはずのブラウザにだけ、アンケート要請バナーを出して答えてもらうことで、特定のネット広告の接触者だけをつかまえての調査が可能である。この手法を使えば、正確にネット広告のフリークエンシーごとの認知率状況などが分かる。
 この人たちに同時にマス広告の接触状況をアンケートし、かつ特定の商品ブランドの認知やイメージ、購入意向なども取ることで、マス広告とネット広告の接触構成(組み合わせ割合)によって違ってくる各指標を読み取る。これによって最適な(つまり同コストで最も特定指標を最大化する)配分割合を算出する。これがXMOSの基本調査設計である。
 こうして出てきた結果は、ことごとく実際の配分よりネット広告を増やしたほうが、企業が求める獲得指標が上がったとするものだった。
 日本でも、いくつかの企業がこうした実証実験にトライしている。特にテレビ広告との組み合わせで、認知経路別に購入意向率がどうなるかを調査する例がある。テレビ広告のみ、テレビ広告とネット広告の両方、ネット広告のみ、などと分け、それぞれの経路ごとに購入意向をとることで、同コストでの最適化配分が設定できる。
 インターネット広告に関しては、その効果は幅広い。企業がどういうマーケティング目標を設定するかで、使い方は様々である。当然、商品カテゴリーやブランドによって求める効果指標も違う。故に企業としては他社の事例がそのまま参考になるケースは少ないと考えた方がいい。企業のマーケターは自社の商品カテゴリー、自社のブランドではネット広告とマス広告の最適化スタディを独自に行うべきである。
 クロスメディア時代はマス広告時代に比べ、広告に求めるマーケティング目標が多様化し、そのための効果指標も多層化する。そこでは自社ベンチマークをもつことが非常に大事で、そこから企業としての広告オプティマイズ思考が出発するといっても過言ではない。
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