AD FILES 2006.5/vol.9-No.2

ストーリー化したシリーズ広告で「モノづくり」への思いを伝達
ソニーマーケティング マーケティングコミュニケーションセンター 宣伝企画部 ITグループ 統括課長 高瀬 竜一郎氏
 ソニーのパソコンVAIOが最初に日本市場に登場したのが1997年。ユーザーに支持され続けてもう10年目となる。そのVAIOのシリーズ広告が、2月から3月にかけての毎週末、5回連続で読売新聞朝刊に掲載された。

VAIOの物語

 「今回のシリーズ掲載の目的は、1人ひとりの読者に対して、VAIOの“人となり”をストーリーとして真摯に伝えることでした」と語るのは、ソニーマーケティング株式会社マーケティングコミュニケーションセンター宣伝企画部ITグループ統括課長の高瀬竜一郎氏だ。
 初回(2月18日)は、素材を適材適所で使うVAIOのこだわりを、質感の高い商品写真で表現した。2回目(2月25日)は、「パソコンにもなるテレビ」というコンセプトのホームノートを紹介。ディスプレーの美しさと存在感のあるスピーカーで、液晶テレビと同等の画質と音質であることが伝わってくる。3回目(3月4日)は、ノートパソコンの理想の形を追求するとワイド画面でスリムボディーに行き着いたことを、扇子になぞらえて示した。
 ここまでの3回は、VAIOの生い立ちや背景を表現したものだ。それを受けて、ストーリーの続きとして買い方の提案を生活者に語りかけた。
 4回目(3月5日)は見開きの2連版。キャッチコピーは、「VAIO・OWNER・MADE」。本誌の読者モニターから「なじみのあるパスタセットで表現されているところがおもしろい。機械オンチの私にさえ、欲しいものが一目瞭然」など多数の支持する声が寄せられた。
 5回目(3月11日)は、「そろそろPCにも、ショッピングの楽しさを。」というメッセージとともにVAIOの新しい買い方を図解で示している。
 こうしたストーリー展開はまさに同じ読者に確実に届く新聞広告の特長を生かしたものだ。  
「広告に物語性を入れると、より記憶に残るはずなんですよ。例えば、いざパソコンの買い替えが必要となったときに、広告で言いたかったことが文脈として理解されていれば、それが記憶に残っていてインターネットで検索してもらえますから」

良識層に訴える

 ストーリー性を持たせて広告を展開した背景には、パソコンという商品自体の成熟化があるという。「今、初めての成熟期を迎えているパソコンは、車や時計のように、様々な価値観による選択の幅があります。従来のパソコンの広告ではスペックと価格勝負が主流でしたが、これからは商品の特長ごとに広告手法も違うはずです」
 今回の広告の想定ターゲットを尋ねると、「作る側のこだわりを理解していただける層、良識層とでも言いましょうか。いいものを見る目を持っている価値意識を共有できる人なら、デモグラフィックな特性やITリテラシーは関係ないですね。新聞の読者にはそういう人が多いから新聞広告を使う。興味深く、わかりやすく、丁寧に伝えたい。他社にはないソニーが独自に取り組んでいるポイントを独自の表現方法で示していきたい。そういう意味で、きちんとコミュニケーションできるメディアとして新聞を選んでいます」
 掲載日を土日にしたのは、広告をゆっくり読んで理解してもらい、さらに興味を持った人にはすぐに実物を触りに店頭に足を運んでもらうという戦略だ。「最終ゴールは理解してもらい、共感していただくことです。文字とビジュアルだけですべてのコミュニケーションを完結させようとは思っていません」
 今回の広告への社内外からの反響を聞くと、「店頭での指名買いが増えています。VAIOは単純にスペックや値段だけのパソコンではないということが社内や流通の方々にも改めて伝わったと感じています」と高瀬氏。スペックと価格だけのことしか語らなかった人たちが、他の部分にも目を向けるようになってきている手応えがあるという。
 「ホームページへのアクセスも増えましたが、それだけではなく、スペックだけパッと見て出て行っていた人に、その商品のストーリーや背景は何かという中身まで見ていただけるようになりました」
 VAIOの宣伝ポリシーは「モノづくり」だと語る高瀬氏。「モノといっても単純にハードだけのことではなく、どういう思いや考えがあってVAIOを生み出しているのかということを理解していただきたい」
 様々なメディアを使う意味については「それぞれのメディア特性を認識して、それぞれに合ったクリエイティブやコミュニケーションを機能させればいいと思います。例えば専門性を突き詰めるにはインターネットは便利ですが、その周辺の大切なことをバランスよくさっと目を通せるメディアとして新聞は大切です。手が伸びる距離で一人の人をあれだけ占拠できるサイズのメディアはほかにはない。例えば、そういう強みを認識した上で、これからもメディアを戦略的に使っていきたいと思います」

2月18日 朝刊 2月25日 朝刊 3月4日 朝刊
3月5日 朝刊 3月11日 朝刊

(増田)
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