From Overseas - NewYork 2006.4/vol.9-No.1

青少年の肥満と広告
 「スーパーサイズ・ミー」という映画をご存じだろうか。これは2004年に公開されたドキュメンタリー映画で、1か月間ファストフードだけを食べ続けるとどうなるかが記録されている。監督自らが被験者となり、彼の体重は1か月後に約11キロ増えたばかりか、かなり深刻な肝臓の炎症を起こした。
 この実験を行うきっかけはアメリカ社会において肥満が急速に増加していることにあるといわれる。とりわけ、青少年の肥満が増加していることは社会問題にもなっている。
 アメリカの疾病対策予防センターなどが6〜18歳を対象に行った調査によると、1976〜1980年の間では肥満の割合が6%だったのに対し、1988〜1994年の間では11%に、さらに1999〜2002年の間では16%まで増加した。すなわち、20年の間に肥満青少年の割合は3倍近くまで膨れ上がったことになる。
 これには学校教育の現場で体育の授業が削減されたことによる運動不足をはじめ、様々な要因が絡んでいるはずだが、ファストフードや清涼飲料など、高カロリー、高脂肪の食品が氾濫していることも大きな要因であることは間違いないはずだ。とりわけ、やり玉にあがっているのはファストフードや食品メーカーのマーケティング手法で、人気キャラクターを起用した広告やパッケージが青少年の肥満を助長しているとして、消費者団体や行政を中心に厳しい眼差しが向けられている。
 今年の1月にはマサチューセッツ州の消費者団体が、ケーブルテレビ局と大手食品メーカーに対して、視聴者の15%以上が8歳以下である番組内でのジャンクフード広告、さらには、人気キャラクターのパッケージでの使用を差し止めることを目的に、裁判を起こす意思があると表明した。同州の消費者保護に関する条例はアメリカの中でも最も消費者寄りといわれており、実際に裁判が行われた場合はメディアと食品メーカーにとって不利な判決が出ることも予想されている。
 子供向けのケーブルテレビ局の広告収入の約35%は食品関係によるものだけに、行政による規制が設けられることになれば、メディアにとっては大きな痛手となることは明らかだ。
 もちろん、食品メーカー側にとっても損失となるはずで、行政や消費者団体からの批判をかわすため、ここに来て自主規制や栄養価の高い商品の発売をはじめ、各社で様々な取り組みが行われている。
 たとえば、大手のクラフト社では昨年1月に6〜11歳を対象とした番組でビスケットをはじめ糖分の多い商品を広告しないという自主規制を設けることを表明した。同社ではそれ以前から、6歳以下を対象とした番組への広告露出は控えていた。
 そんな業界を取り巻く厳しい状況のなかで、肥満防止に向けた取り組みに新聞広告が活用されている事例がある。
 コカ・コーラ社が、青少年の肥満防止に向けて体育や栄養に関する教育を支援していることをはじめ、低カロリー飲料の新商品を昨年だけでも15種類も発売したことなどを全ページ広告の中ですっきりとまとめて掲載し、反響を呼んでいる。
 企業の活動やメッセージを詳しく伝えることが得意である新聞のメディア特性を十分に活用したものと言えるであろう。
 子供たちをターゲットにした食品の商品広告はテレビを中心に展開されているが、啓発といった社会的メッセージの発信に関しては新聞広告のほうが効果的であることから、今後さらに新聞広告が使用される場面が増えそうだ。
 
2月16日 NYタイムズ紙
(3月6日)
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