こちら宣伝倶楽部 2006.4/vol.9-No.1

広告担当役員への15のお願い
イラスト 景気はやや回復のきざし、きざしや兆候、前ぶれ、気配のようなものを感じたら、一気に本ものにせまるための動きと、そのためのアプローチ計画が重点課題になる。宣伝部の役割は大きいが、担当役員の役割と責任はもっと大きく、その感性と度量が試される。お飾り担当ではこういう時会社が迷惑する。この人は信頼にたるリーダーかどうかも問われる。組織にチャンスと活力をもたらすために、部下の思いも含めて担当役員へのお願いを列記してみる。

(1)小舟に乗せるな・大船に乗せなさい

 遠くへ安心して、ゆったりと行くには、船は大きい方がよい。その船がいつのまにか戦艦になってしまったら、乗員は兵隊になり夢はかくれる。購買部みたいに価格交渉だけの宣伝部になったら、新しいことは始まらぬし、人が集まって来ず、情報と知恵、提案は激減する。スケールの小さな宣伝部より夢の大きな宣伝部を。

(2)あとから意見いうな・初めに見解を語れ
 あとからの意見や感想はレベルが低くなりがちで、部下やスタッフからの人間的価値がさがる場合がある。いうなら事前に意見でなく考えを、見解でなく指示や方向を示す言葉にしてはっきり述べて、きちんと納得をとりつけておくこと。これとのズレだけはあとになっても議論する。大きな流れをきちんと示すのが責任だ。

(3)聞き上手に徹し・正しいかどうかで判断せよ
初めから意見をいいすぎると、それが意見でなく指示や命令に近づいて、衆知を集める機会を見失ってしまう。内外を含むスタッフが意見や考えを自由にフランクにだせる環境や雰囲気を作ること。発言する時は「好き、嫌い」「よい、悪い」でなく、そのことは「正しいか、正しくないか」でジャッジするように心掛ける。

(4)若い人から学ぶ姿勢を大切にしなさい
 若いスタッフのいいところをみつけ、彼らから学ぶ、彼らから声のかかる関係をつくってほしい。彼らは目的がわかり、納得のいく仕事を与えられたら意外な力を発揮する。エンジンをどうかけるかを間違えないこと。仕事を楽しむよい意味での遊び感覚、命令で人は動かない。

(5)任せる勇気と・受けとめる度量
 担当役員にとって大切なことは、組織と人を育てること。だから時間のかかる仕事を優先し社内にいろいろ飛び火しそうな仕事を優先させることになる。よい体験をさせるためにポイントをアドバイスして任せる、中間で報告をうける、じゅうぶんな成果があがらなくてもドンと受けとめ、問題点を膝(ひざ)を交えて検証しあう。

(6)生活者感覚をなくしたら交代しなさい
 平凡な、良識ある消費者、生活実務者としてのスタンスを失わぬこと。自らも健全なる消費生活者としてその感性はシャープにしておくこと。身の回りのものくらい自分で買う習慣を体得した方がよろしい。家族や友人のアンテナも借りること。会社で終日机に向かうことやワンパターンの休日は感受性から先にボケる。

(7)貧乏くさくなるな・リッチを本分とすべし

 個人的に質素でつましいのは勝手、しかし会社の仕事はその底流や核になる部分に豊かな風が吹き、リッチな血が流れていなければならない。広告はその社の企業文化、価値軸のありかをのぞかせるからだ。チマチマとしたいじましい号令をかけてはいけない。清潔で堂々として、しっかりした企業の見識を示すべきだ。

(8)クリエイティブから始めるな
 クリエイティブを広告の目的にしてはならない。その結果だけに興味を示し、そのことだけに多弁にならないように。経費率が高いからとテレビから煮つめていく広告作法に溺れていくのも役員だからこそ自戒してほしい。広告の仕事をはしゃいだ軽い印象の仕事にするのも時代おくれ、クリエイティブには半歩あいだおけ。

(9)3年先の仕事をしているつもりで働け

 意志決定に自信がないと目先と足もとと、とりあえず当面のことに終始する仕事が増える。ブランドの風格を考えると、少し先をにらんで腰おちつけて、視野と視点を大局的に調整し、横糸に夢やビジョンを織りこむ判断仕事を、担当役員は究極の仕事と考えるべきだ。次のシーンを現場に語り継ぐ幸せに酔ってほしい。

(10)私設のブレーンを持て
 広告宣伝の担当役員は宣伝部長ではない。宣伝部長のよき相談相手であり、企業の価値軸のありかについて議論しあう、兄貴分のようなものと考えてほしい。勉強しても間にあわないことや、わざわざ勉強する必要のないものに気づき、内証で私設ブレーンを2、3名持ってほしい。広告会社の人はブレーンにしないこと。

(11)社長と堂々とわたりあう姿を見せなさい
 宣伝部の仕事は社長の直轄という社もあるが、その場合でも、宣伝部に近い役員は必ずいる。
 担当役員はしっかりした正論を持ち、正しいと思うことには何者をも恐れず、積極的に堂々とわたりあう勇気と決断力を持って、それを貫き、説得するシーンを具体的に見せ示そう。

(12)実験、テストのための余裕を残せ
 新しいことにトライすることや、次のステップのために実験的なことを、日常の仕事のなかでこっそり組みこんで、さぐりをいれ、テストをし、自らで実証して次の転機材料を貯めておく仕事を忘れないでほしい。予算と気持ちにそのための余裕をあらかじめ組みこむ指導がいる。節約、節減だけではブランドはふくらまない。

(13)うしろを向くな・前を見てすすめ
 過去に学ぶことやヒントをさぐることは大事だが、単純にむかしを懐かしむだけ(年寄りの日向ぼっこ)は、前へ進もうとするエネルギーをパワーダウンさせる。広告だけですぐにものが売れると思わず、広告宣伝費の投資性をむしろ信じ、立証しようと前むきになる先見性に自信をつけ、いたずらにケチにならぬこと。

(14)社内最強のブレーンに育てあげる野望を
 特定の部門や仕事に片よらず、広報部門にも近いと、宣伝部には社内のハブ空港のような役割や機能を持たせることが可能になる。社内情報の縮図のようなところを持つことは経営者にとっての利便性は大きい。宣伝部門というのは元来そういう役目も持っている。マネジメント力のある良識の府としてブレーンの配置を。

(15)あいまい・中途半端ならつぶせ

 広告宣伝を経費として追いこんでいくと、宣伝部そのものの存在まで効率による管理判断になる。だから責任者のキャリアは浅く、スタッフもじゅうぶんでない宣伝部が多くなる。
 宣伝部は一気に強化していくのか、そうでなければ思いきって廃部してしまい総務仕事にするのか。その中間のあいまいというのはない。
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