CURRENT REPORT 2006.4/vol.9-No.1

創薬を通じてグローバル企業へ「祈り」に込めた経営統合の思い
 今、国内の製薬業界で再編が相次いでいる。昨年4月に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併したアステラス製薬(製薬国内3位)を皮切りに、9月28日には三共と第一製薬が経営統合し、持ち株会社 第一三共(同2位)を設立した。統合後の売上高は9000億円規模となり、業界首位の武田薬品工業と合わせ、三強時代に入ったといわれている。
 そこで、経営統合に踏み切った理由と新会社でのコミュニケーション活動について、第一三共 コーポレートコミュニケーション部副部長 吉田 雄三氏に話を聞いた。


吉田 雄三氏 ――経営統合に至った大きな要因は
 スケールだけがすべてではないのですが、製薬メーカーはある一定の規模が必要な時代になりました。ある一定の規模とは、年間研究開発費1500億円を指すと我々は考えています。だからこそ、今回我々は経営統合に踏み切ったという訳です。

――新薬を生み出すには膨大な研究開発費が必要だということなのですか
 ええ。経営統合の狙いにはグローバルに闘っていくということがあります。日本国内にとどまらず、欧米、アジア、世界のメガファーマ(売上高2兆円規模の巨大製薬会社)と伍して闘い、勝っていくということ。経済的側面でいうとそうですね。
 さらに、社会的側面でいうと、スピードです。それは画期的な新薬を創出していくことによって、社会に貢献していくということです。つまり、経済的な狙いと社会的な狙いとの二つが統合の目的にはあるといえるでしょう。

――経営統合を実施された9月28日には新聞広告を掲載されましたが
 まず、ステークホルダーとして医療従事者の方々にごあいさつをするという意味がありました。ドクターや薬剤師の先生、看護師さんも含む医療従事者全員に対してです。あとは、社会というよりも、やはり患者さんに対してですね。それと、健康に意識の高い生活者。健康に対する意識の強い人に対して響くようなメッセージにしたつもりです。

――メッセージの具体的な内容は
 まず、経営統合したことによって、様々なステークホルダーに対し、我々が何を提供できるのかということを社内外のインタビューを通して掘り下げていきました。
 その結果、浮き彫りになったのが「時間」ということでした。早く薬を開発し、市場に届ける。この早くというものに対する価値というのはやはり高く、特にガンや難治性の高い疾患に対してのスピード感というのは、非常に価値が出てきます。さらに、医療費的にも助かるはずです。初期の段階で病気を治癒させれば、それ以降の重症になる確率を減らせます。重症になるとどうしても高額医療になってきますから、それらを軽減することができるなど、やはりスピードは大切だなと。
 さらに、当然ですが今まで開発できなかったものを開発していくということ。この二つの価値をメッセージに込めました。

――広告のビジュアルも、女性が祈りをささげる印象的なものですね
 この「祈り」のビジュアルを使うことは、製薬メーカーにとってリスクのあることです。祈るという行為には何かを願って前向きに祈る場合と、亡くなった方に対して祈る場合との二つがあります。だから、我々がこのビジュアルを使うことで、後者の意味に誤解する人がいないとも限りません。しかし、前述した我々の二つのメッセージを伝えるには、このビジュアルがベストだと判断しました。
 私も広告の作業を10年以上やっていますが、今回の広告は最もチャレンジングなことの一つでした。おかげさまで心配したクレームもなく、ビジュアルに関しても好意的に受け止めていただいたようです。

――今後、どのようなコーポレートブランド像の形成を目指すのでしょうか
 『日本発グローバル創薬型企業への飛躍を目指します。』という経営統合ビジョンをブレークダウンし、「各ステークホルダーに対してどういう価値が提供できるのか」ということを見据え、新たなコーポレートメッセージ、スローガンの開発に結び付けていくつもりです。単に「グローバル・ファーマ・イノベーター」と言っても誰も理解してくれませんから。
 その代わりに言っていきたいことは、第一三共はグローバルの競争の中で確固たるポジションを作っていくということです。そのポジションとは何かというと、単なる売上規模ではなく、それ以外のポジションです。専門領域に特化したポジションでも良いと考えています。「循環器系だったら日本の第一三共だ」のように。医療従事者から見たポジションもそうですし、生活者から見たポジションも作らないといけません。これも時間との闘いになりますね。

9月28日 朝刊 34面 9月28日 朝刊 36面


取材メモ
 2005年9月28日に三共、第一製薬を傘下に持つ共同持ち株会社としてスタートしたが、2007年4月に事業持ち株会社へ移行することでグループの統合作業はすべて完了する予定。
 ブランドマークの全体の円形は美しい地球を表し、上部は柔軟な知性と創造性を、下部の円弧は信頼感と使命感を表している。中央部の白い空間はいきいきとした生命を表していると同時に「命の大切さ」と「いとおしさ」を意味しているという。
 ブランドカラーのブルーは製薬会社の「信頼性・使命感・責任感」を、黄色から緑の階調は生命のいきいきさを表すと同時に独自の研究による「創薬」をも意味しているという。
第一三共ロゴ

(佐藤)
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