CrossMediaの必然性 2006.4/vol.9-No.1

クロスメディアの必然性と前提
 ネット社会の進展は、企業のマーケティング活動と広告ビジネスに大きな変革をもたらそうとしているようだ。そして、それは主に3つの事象に起因していると思われる。

(1)マス広告の到達力の低下と分散化
(2)生活者の購買心理形成プロセスの変化
(3)広告主企業による自社メディアの獲得
の3つの要因である。

 そして、この3つのいずれもが生活者へのインターネットの普及と浸透がもたらしたものである。まず、マスメディアの雄であるテレビの視聴率は、世帯視聴率ベースでは際立った低下を示していないが、個人視聴率ベースではかなり大きな落ち込みを起こしている。F2層(女性35〜49歳)などではここ6〜7年で10%近く低下している。また、視聴態度もいわゆる「専念視聴」が減り、「ながら視聴」時間が増えているものと思われる。その原因もまた、インターネットに接続された端末がテレビの置いてあるリビングやダイニングに進出していることによるようだ。「ダブルウィンドウ化」と呼ばれるこうした現象によって、10年前と同じGRPのテレビスポットを投下しても、今は以前より効かなくなったという広告主の感覚を証明する仮説となるかもしれない。
 ただ、本当の意味で、マス広告の効果に疑問が生じているのは、(2)の「購買プロセスの変化」によるところが大きい。従来、マスマーケティングにおける典型的なモデルは「AIDMA」<Attention(注意)→Interest(興味)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(購買)>と呼ばれるもので、以前から「AIDMAはもう古い」といわれてきたものの、これに取って代わるモデルはなかなか登場しなかった。ところが、ここ数年CGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア)と称されるようなネットによるコンシューマー発の情報が、コミュニティの掲示板やブログ、SNSなどによって大量に発信されるようになった。購買プロセスは「AIDMA」では、すべてを語れなくなった。ネットから同じ消費者(購入者)の感想、意見を容易に入手することが可能になり、ネットが重要なツールとなって、特に購買リスクの高い商品の購買プロセスにおいて、比較検討をするステージが大きな影響をもつに至った。
 これによって、テレビなどマス広告だけでは、購買行動までを促すことができにくくなってきた。広告キャンペーンも従来のような「テレビでドカンと大量投下して、後は店頭で待っていればいい」というスタイルばかりでは難しくなった訳だ。
 購買プロセスにおいて比較検討ステージに最も寄与するのがインターネットである。クロスメディアの考え方の基本が、このテレビなどのマス広告だけでは購買行動まで持っていきにくくなったところを、ネットとマスを組み合わせて購買までの道筋を確保しようとするものだ。
 さて、こうした環境にあって、企業もWebサイトをマーケティングに活用する方向性を見いだし始めている。一部の広告主企業サイトはマス広告メディアを数10億円〜100億円規模で使ったことに相当するようなメディアパワーをもつ。広告主企業にとっては初めて獲得した本格的な自社メディアであり、自社チャネル、自社マーケティング装置である。これをマーケティングのコアに据えて、マーケティング全体をデザインしようとするのはある意味必然といえる。こうなると従来のマス広告やプロモーション活動は、企業Webサイトのパフォーマンスを上げるために使われる。こうした構造もまたマーケティング活動のゴールをWebサイトのなかに設定して、ネットやマス広告を駆使して、その効果を最大化しようという狭義のクロスメディアといえる。
 いずれにしても、「クロスメディア」の必然性は、こうしたマーケティング環境の変化が前提となっているのである。
 次回からは、より具体的にクロスメディアの考え方とその効果について触れてみたい。

もどる