特集 2005.9/vol.8-No.6

環境コミュニケーションとは何か?
環境コミュニケーションを変えるLOHAS〈ロハス〉

 環境も実利に結びつかなければ消費者は動かない、と言われてきた。ところがここに来て、自分なりの生活を大事にしながら、環境への配慮も当然のように考える人たちが増えてきた。LOHAS(ロハス)と呼ばれる彼らの登場によって、環境コミュニケーションはどう変わるのだろうか。

――消費行動という視点から見て、消費者の環境に対する意識は変わってきているのでしょうか。
 消費者、受け手から見ると、「環境に取り組むことが何かを犠牲にしている」という気持ちが、今まではあったと思います。エコカーを買おうとするならスピードはあきらめなければならない、有機野菜を買っているのだから泥がついているのは仕方ない、そう思うことが多かったと思います。こういう何かを押し付けられた感じがする「エコ」というのは、たぶん長続きしない気がしています。しかし、ここにきて、環境のことも考えているけれども、自分がやりたいこともするという意識を持った人たちが増えてきています。
 最近、話題になっている「LOHAS」という言葉は、こういう人たちのことを端的に表していると思います。LOHASは、lifestyle of health and sustainabilityの略です。自分のやりたいこと、「エゴ」をしっかり持った上で、しかも「エコ」を考えるような人たち、自分なりのこだわりのある生活を送りながら、その中に環境への配慮もちゃんと考えるようなライフスタイルの人たちのことです。

日本人の3割はLOHAS

――LOHASは、いつごろから言われ出した言葉なのでしょうか。
 もともとは、アメリカのライフスタイル研究から出てきた言葉です。米国の社会学者ポール・レイと心理学者のシェリー・アンダーソンが1998年に発表した研究が元になっています。この研究ではLOHASという言葉ではなく、「Cultural Creatives(生活創造者)」という名称でこの層を呼んでいました。それがマーケティング的な視点からとらえ直されて、LOHASと呼ばれるようになったものです。

――日本でもLOHASの調査をしているのでしょうか。
 今年、私どもとCSR・環境コンサルティング会社のイースクエアという会社が提携して、イースクエア実施の日米合同のLOHAS調査に参加しました。代表のピーター・D・ピーダーセン氏が、これからの世の中と共生していくためにLOHAS的な視点が日本人にも非常にマッチするのではないかということを提唱していて、今年初めて日米合同で生活の意識調査をしたものです。
 まだ、細かい分析は済んでいませんが、調査結果を見ると、日本では全体の3割ぐらいがLOHASです。

――それは「多い」と見るべき数字ですか。
 3割というのは、もはや単なる流行のライフスタイルというよりも、社会現象ととらえた方がいいかも知れません。また、日本29%、アメリカ23%ですから、日本の方が割合としては多いですね。ただ、アメリカのLOHASには、かなり東洋的な思想や精神がベースにあります。たとえば、ヨガが普及していて、日本人が元々持っている精神的な要素が多分にあります。日本的な視点でのLOHASは、アメリカとは少し違うと私たちは見ています。
 また、年齢層を比較すると、アメリカのほうは若い世代が中心ですが、日本は年齢層が少し上です。LOHAS的な特徴として、「自分の好きなことをする時でも、環境に配慮したものなら二割増し程度の金額なら買う」というのがあるのですが、そういう購買行動を取るのは日本では少し上の年代です。ただ、LOHASは基本的に都市型の文化だと思いますので、アメリカと同じように都会の若い人たちを中心に今後広がっていくと思います。

各クラスターの特徴
LOHAS 環境・健康に対する関心が高く、実際に行動に移す。社会的課題全般に対しても意識が高い。自己啓発や精神性の向上に関心が高く、上昇志向、購買意欲も強い。気に入った商品を家族や友人にすすめるなど情報発信力が高い。
生活堅実層 環境・健康関心は高いものの、実際の行動にまではいたらない。
LOHAS層ほど社会的課題に対する関心も持っていない。
コストパフォーマンスを重視する。女性が58.4%と多く、専業主婦(夫)が多い。
中庸無難層 特に突出した意見、価値観を持たず、環境・健康関心は全体に比べて低い。商品の選択基準は、有名メーカーである/テレビCMで知っているなど無難な理由となる傾向。性別に偏りはなく、20代が24.5%(全体19.2%)を占め、やや多め。
個人利便層 環境・健康に対してはほとんど関心を示さない。社会的関心も薄い。
利便性の高いもの(インスタント食品、コンビニエンスストア、ネットショッピング)を好む傾向。男性が57.4%と多く、年代は30代以下が半数以上を占めている。


上昇志向もある意味「自然体」

――具体的にLOHASというのは、どういう人たちなのでしょう。
 環境・健康に対する関心が高く、実際に行動に移す。社会的課題全般に対しても意識が高い。自己啓発や精神性の向上に関心が高く、上昇志向、購買意欲も強い。気に入った商品を家族や友人にすすめるなど情報発信力が高い。まとめるとそういう特徴を持っています。

――1つだけ疑問に思うのは「上昇志向」ですね。人を押しのけていくような人が、「環境に配慮した行動をしよう」というようなことを考えるのかどうかですが。
 この層というのは、エゴとエコが同居しているのです。ですから、社会のことを考えて自分のことを犠牲にするような聖人君子ではない。上昇志向のような自己実現欲求を持ちつつも、環境にも関心を払うという人たちなのです。
 ここがたぶん、LOHASのおもしろいところだと思っています。LOHASというのは、無理しない「自然体」のことなのだと思います。エコとエゴを自然体で同居させているところに大きな特徴があると思います。
 やはり、自然体になった時に物事は決着すると思うのです。男女同権が叫ばれていた時代に、団塊の世代で「友だち夫婦」という言葉がはやりました。「友だち夫婦」と言うこと自体が実は構えていたわけで、それが今は、男女同権を意識することなく友だちみたいな夫婦が当たり前になっています。

肩の力を抜いた環境意識

――環境にも同じことが言えそうですね。
 我々のチームの中におもしろい女性がいて、子どもが生まれて食生活をちゃんとしなければと思って有機野菜の宅配サービスを頼んだ。野菜に泥がついたまま届くらしいのです。勤めていますから、金曜の夜に家に帰ってから、まとめて泥を落とす。そうすると、虫が出てきたりする。子どもは野菜嫌いで食べないし、だんなさんは「そこまでしなくていいんじゃないの」と言う。自分としては正しいことをやっているのに、誰も理解してくれない。泥がついている、虫がついている。そうしているうちに、だんだんと金曜の夜に帰るのが嫌になって、その日は残業するようになった。それを聞いたチームのメンバーは、「それってどうなっているの」「そんなのやめちゃえば」と言い出す。それでキャンセルしたという話です。
 それは、環境や健康のことを考えて肩ひじ張りすぎていたということです。そういう無理は続かない。必要なときに普通のスーパーで有機野菜を買えばいいだけで、そこに泥がついているか、いないかは、どうでもいい。
 環境のことを考えることが自然体として受け入れられていれば、「環境のことをカッコつけて言ってるな」「正論ばかり言って」と思うことなく、すんなり入ってくる。そういうように、LOHASというのは「肩の力を抜いて環境のことを考えられる人たち」だと思うのです。環境のことを考えることが自然体になってきたというのが、十年前の生活者との大きな違いだと思います。

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