読売新聞 海外駐在員リポート

欧州の新聞「エクスクルーシブ感」を最優先
世界的に有名なフランスの自転車レース「ツール・ド・フランス」は、1903 年に仏スポーツ紙レキップの前身のロトが部数を伸ばすために立ち上げたイベントで、現在もレキップなどを傘下に持つメディアグループ「アモリ・スポル・オルガニザシオン(A.S.O.)」が主催している。
翻って現代の欧州の新聞社は、大規模イベントにはスポンサーとして関わる一方で、読者限定の小規模なイベントを数多く主催している。その目的は読者の満足度を高めるためだ。一般紙では、記事に関連したテーマのセミナーはもとより、ワインテイスティング教室(英テレグラフ)、美術展の特別公開イベント(仏ル・モンド)、旅行ジャーナリストが提案するクルーズ旅行(仏フィガロ)まで、さまざまな知恵を絞っている。英ガーディアンのように新聞、電子版の購読のほかに、イベントサブスクリプションの制度を設けている新聞社もある。
一方、経済紙では、事業を収益の大きな柱としているところもあり、産業別のビジネスミーティングを頻繁に開催し、企業間の取引機会の創出の場として一役買っている。例えば、英・フィナンシャル・タイムズは、様々なテーマを扱うイベントシリーズ「FT Live」を世界各地で開催。日立が協賛し経営者を対象にしたITフォーラムや、香港で開催するHSBC他協賛のアジア保険サミットなど、企業がスポンサーになることもある。
近年、欧州の新聞社の関心事は購読者数の安定だ。各社の事業は、読者の「エクスクルーシブ感」をいかに喚起するかの優先度が最も高いように見える。
阿部泰三 パリ駐在
「ツール・ド・フランス」の期間中、個人総合首位の選手が着用する「マイヨジョーヌ(黄色いジャージ)」は、主催だったロトの新聞紙の色に由来すると言われており、今年100 周年を迎えます。チーム戦、山道、高速区間など、弊社共催事業の箱根駅伝との共通点も多く、こちらでも夏の国民的イベントです。