読売新聞 海外駐在員リポート

グループ力を結集、仏フィガロ「14 Haussmann」
欧米のパブリッシャーの、広告収入モデルから購読収入モデルへの移行が急速に進んでいる。それは購読料収入による経営の安定化が第一義としてあるが、同時に購読者の行動データを広告に活用するという側面もある。欧州の主要なパブリッシャーのほとんどがブランドスタジオを運営しており、クリエイティブやユーザーデータを通じ、広告主と消費者(購読者)の距離を縮め、さらにGDPR、アドフラウド、フェイクニュースといった事象を背景に、存在感を増している。
ここフランスでもいくつかのパブリッシャーがブランドスタジオを置いている。その中のひとつ、新聞、雑誌など19のタイトルを持つ「グループ・フィガロ(Groupe Figaro)」のブランドスタジオ「14 Haussmann」のゼネラルディレクター、ベンジャミン・ラサール氏に話を聞いた。
14 Haussmannは、グループ・フィガロの広告部門会社「Media Figaro」が2016年、ブランドマーケティングとSNSを専門とする制作会社「Mensquare」を買収し、「Social&Stories」という名称でスタート。その後昨年3月に、クリエイティブ機能にマーケティング、データ分析の各機能が加わり、14 Haussmannに発展させた。なおSocial&Storiesは、SNSのインフルエンサーマーケティングに特化したサービスを提供する部門として一部存続し、14 Haussmannと現在も協業している。
14 Haussmannは、パリ9 区にあるフィガロ本社の住所で、名称には「グループ全体の資産とスキルが一つに集まり、横断的にアクセスできる場所」という意味が込められている。「私たちは新聞だけではなく、オピニオン誌、女性誌、スポーツ誌など、アウトプットの多様性が特長です。それに加え、経験と実績、豊富なデータから多元的なソリューションを提供することができます」(ラサール氏、以下同)
仏車・プジョー508のキャンペーンでは、新聞、雑誌、デジタル、SNSと全方位で展開した。「グループ・フィガロのサイト訪問者のデータを徹底的に分析すると、508のターゲットとなりうるユーザーは、建築やデザインなどに興味があることがわかりました。そこで各界のリーダーへのインタビューを動画にまとめ、コンテンツサイトにアップしたところ、4分以上の平均滞在時間を記録しました。またFacebookのプジョーとフィガロのアカウントにもインタビュー動画をアップし、拡散させました」。コンテンツサイトの訪問者の情報は14 Haussmannが解析し、プジョーにリポート。同社の今後のマーケティング活動に利用するという。
「私たちは広告主のウェブサイト制作やアプリの開発なども行っており、サービスの範囲をグループ・フィガロのメディアの利用に限定していません。長期的には商品開発や流通チャネルといったグループの強みを生かして、広告主と一つのキャンペーンだけの関係ではなく、永続的なパートナーシップとブランディングのカウンセリングを行っていきたいと考えています」

フランス郵便貯金銀行のAR キャンペーン。キャンペーンサイトには9 万人以上の訪問があった。アプリは14 Haussmann が開発。

プジョーのコンテンツサイト。デザイナー、学者、
起業家などへのインタビュー内容と508 の特長がシンクロしている。
阿部泰三 パリ駐在
カフェでコーヒーを頼むと、たいてい少量で苦いエスプレッソが出されます。これではすぐに飲み終わってしまうので、ゆっくりしたいときはアメリカンのように薄めの「アロンジェ」を頼むのですが、多くのお店でエスプレッソとお湯の小さなポットが出てきます。自分でコーヒーのお湯割りを作れということですが、なんとなく邪道な飲み方をしているような気持ちになります。