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広告リポートfrom Europe

(Wed Oct 05 10:00:00 JST 2016/2016年10・11月号 from Europe)

デジタル偏重の落とし穴
国友 俊   パリ駐在

  今回の執筆に際して、新聞社に入社間もない頃、コピー機メーカーに勤める父から教わった事を思い出した。当時ペーパーレス社会が叫ばれていたが、世の中で紙を一番消費している企業はどこだと思う?と聞かれ、言葉に窮した。それが米国の大手IT企業と教わり、驚いたことを憶えている。当時、ウィンドウズOSが台頭し、ペーパーレスを推進するはずのIT企業が、紙を大量消費している。自分の中で?マークが浮かんだ。実は同社のプログラマーが、間違いがないかをチェックするため、紙に出力して確認を行っているということだった。人間はスクリーン上では間違いに気付きづらい。父から学んだ大事なヒントがあった。その後、提案書などを作る際、必ず紙に出力して確認をするよう心がけるようになった。新聞の校閲作業も必ず紙で行われているが、まったく同じ理由による。

  紙とデジタルで文章を読んだ時の特性の違いは、30年以上前から世界各国の教育分野を中心に研究されてきた。近年、急激なデジタルシフトが進む中、過去の研究内容を振り返るべき時が来ている。1980年代、多くの研究者は紙で読むことは、デジタルより速く正確に理解できると結論付けていた。さらに近年の研究では、読む姿勢(attitude)の違いが指摘される。デジタルで読む場合、目当てのニュースや情報を探し、キーワードで検索することが主たる目的になるが、紙の場合、目的は文章を読むことなので、理解力や読解力が高まり、学習や熟読に向いている。英国レスター大学の研究では、記憶に差がでる結果も発表されている。デジタルの場合、画面をスクロールやクリックしなければならず、すぐに見返せない等の負担がある。一方、紙の場合は手に持ってページを捲(めく)ったり戻ったりでき、読む行為自体に没頭できるので記憶にも残りやすい。さらに、近年米国の言語学研究者ナオミ・バロン氏が執筆した「Words Onscreen」によると、日本、ドイツ、スロバキア、米国の計300大学のミレニアル世代に行った調査で、実に92%がパソコンやスマホなどデジタル端末より紙の方が集中力が高まると回答し、欧米メディアの関心を集めた。

  紙の新聞や書籍が持つ力を見直す動きは他にも見られる。英国ではプリント版を廃止するメディアもある一方で、今年、新聞広告を後押しする調査結果も発表された。コンサルティング会社のベンチマーケティングと、主要ニュースブランドの調査を行うニュースワークスによる共同調査で、広告キャンペーンにおいて新聞広告を用いると、ROI(費用対効果)が約3倍になるとの調査結果が示された。つまり、新聞広告を用いないキャンペーンは、効果が半分以下になるとの警鐘だ。

  今回の執筆のために、様々な調査結果を集めてみて、我々が忘れてはならない紙の魅力に改めて気付かされた。人間の脳と紙との親和性は、感じている以上に強固であることは調査結果が立証している。欧米の新聞では、企業幹部の多くが紙の新聞読者であることをアピールするが、反対に捉えると世界中で紙の新聞を読んでいない企業幹部や知識人はどれだけいるだろうか。恐らく、かなり少ないだろう。短時間に多くの情報を効率的に脳に取り込むことが出来る紙媒体。デジタル情報だけを頼りにした場合、人間は偏った断片的な情報しか得られず、しかも効率的に記憶に残すことが出来ない。不完全な状態が習慣化してしまうのだ。デジタルの便利さは否定できないが、その弱点も忘れてはならない。

国友 俊・パリ駐在

パリ郊外の山下農園で毎年行われる収穫祭にお招きいただきました。山下さんは「奇跡のカブ」など、新鮮で美味しい野菜をミシュラン三つ星レストランに納めています。一流シェフや美食家に受け入れられる野菜作りに、同じ日本人としての尊敬と誇らしい気持ちを感じました。

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