from America
(2012.1.27/2012年2・3月号 from America)
進化か絶滅か
鈴木 慶太
ニューヨーク駐在
米労働省の発表によると、2011年12月の失業率は2009年2月以降最低値となる8.5%で、前月より0.2ポイント改善した。2か月連続8%台にとどまったことで、景気回復及び雇用状況の改善に期待感が持たれている。広告業界誌アド・エイジの調べでは、広告・マーケティング業界の従業員数も年間を通じて増え続けている一方、メディア企業の従業員数はインターネットメディアの好調にもかかわらず、新聞社の従業員数削減が大きく響き、底を打った2010 年6月以降ほぼ横ばいのままである。
2011年11月の米新聞社従業員数は10年前の2001年11月比で約4割減となっている。特にここ数年、有力紙の破綻や人員削減など業界の地盤沈下が進んでいることは周知の通りである。依存度の高い広告収入の減少が死活問題となっているものの、抜本的な対策はいまだ見いだせていない。必然的に新聞の危機が叫ばれる中、メディア、コミュニケーション研究で有名な南カリフォルニア大学アネンバーグ・スクールセンターが12月に発表した予測が話題となっている。
同センターの予測は「今後5年間で生き残る米日刊紙は4紙のみ」であり、実に1,400以上の日刊紙がなくなるというものだ。生き残るのは発行部数トップ 3のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)、USAトゥデイ、ニューヨーク・タイムズ(NYタイムズ)に加え、ワシントン・ポストとしている。この予測では今後毎週5紙の日刊紙がなくなる計算で、さすがに悲観的過ぎるという声も多いが、「10年以内にはあり得る」と同調するジャーナリストもいる。財政圧迫で窮した新聞社が人員削減、配布エリアの縮小、購読料金の値上げなどを行うことで質の低下、部数減を招くという悪循環に陥り、経営破綻もしくはデジタルに活路を見いださざるを得ないという考えに基づくものだろう。さらに新しいメディアの登場、新聞読者層の高齢化も重なり、これまで以上に淘汰が加速されることも考えられる。悲しいかな暴論と言い切れない現実に直面していることも事実だ。
一方で生き残ると予測される4紙はどうだろうか。リーマン・ショックの影響から破綻も危ぶまれたNYタイムズは人員削減などで経営をスリム化し、立て直しに成功した。2011年3月にオンライン課金を開始して以降は紙に加え、インターネット、タブロイド端末、スマートフォンなどプラットフォームを問わない情報プロバイダーへの転換を加速させている。オンライン版購読者も順調に増え、デジタルのみで黒字を達成した。かつて最大部数を誇ったUSAトゥデイも人員削減、マルチプラットフォームへの対応など、NYタイムズと同様のプロセスを歩んでいる。
他紙に先駆けてオンライン課金を開始したWSJは、2007年にルパート・マードック氏率いるニューズ社に買収されて以降、一般紙化が進み、全面カラー化、昨年のニューヨーク地域版の立ち上げなどにより、新聞広告売り上げでは独り勝ちとも言える状態だ。
ワシントン・ポストは新聞事業では苦戦を強いられているものの、本業以外のビジネス、特に同社売り上げの約60%を占める教育会社カプランが新聞の不振をカバーできる企業体制にある。
今後、米日刊紙の数が減ることは間違いないだろう。情報を得るためのチャンネルは増える一方だ。今、米新聞社に求められるのは新聞ビジネス継続のための企業体質改善であり、メディアとしての新聞の魅力を発信し続けることではないだろうか。新聞メディアが進化する余地は、まだあると思う。

