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インタビュー企画の仕掛け人

(Wed Nov 28 12:00:00 JST 2012/2012年12月・2013年1月号 Creativeが生まれる場所)

すべての広告を抹茶の緑で埋め尽くす[サントリー “抹茶入り「伊右衛門」” ]
サントリービジネスエキスパート   宣伝部 制作グループ クリエイティブディレクター   加藤 英夫氏 HAKUHODO DESIGN   代表取締役社長 クリエイティブディレクター   永井 一史氏

谷山氏、佐々木氏、箭内氏

左から加藤氏、永井氏

今年10月2日、サントリーの緑茶飲料「伊右衛門」が「抹茶入り」というキーメッセージで生まれ変わり、緑鮮やかな新聞広告が掲載された。テレビCMや交通広告、店頭まで抹茶の緑で埋め尽くされたが、実はメディアごとに違う撮影を行ったという。2004年のブランド立ち上げ以来、話題になってきた「伊右衛門」の広告はどのような考え方から作られてきたのか。サントリー宣伝部の加藤英夫氏とクリエイティブディレクターの永井一史氏に、広告発想の原点を語ってもらった。

──加藤さんはサントリー宣伝部で、コピーライターでもあるわけですが、「伊右衛門」での役割というのは?

加藤   私は社内で協議してクリエイティブのオリエン内容をつめて、最終的に表現の着地に至るまでをトータルに管理する立場、永井さんは広告会社で実際の制作に携わるクリエイティブディレクターという立場ですが、あまり役割を固定的には考えていません。良いクリエイティブを作るためのパートナーだと思っています。通常は、商品開発後こちらからオリエンして、アイデアを出してもらうというかたちですが、「伊右衛門」の場合は少し特殊でした。実は、永井さんたちのチームに商品開発の時点から入ってもらっていたんですね。

──開発段階から参加するというのは、広告のアイデアに影響するものなのでしょうか。

永井   実は、コミュニケーションを考えるということでは、プラスの面とマイナスの面がありました。「伊右衛門」の発売は2004年で、その2年前から商品開発に参加させていただいたのですが、そうすると商品を見る目がメーカー視点になってしまうというか、客観視できなくなってしまうんですね。僕たちはやはり、この商品の良さを知り尽くしている作り手の視点と、それを世の中がどう受けとめるのかという受け手の視点の両方のバランスを考えなければいけないと思うんですね。世の中のことしか考えないと商品の価値がちゃんと伝わらないものになるし、逆にメーカー側に立ち過ぎると、世の中に伝わらないコミュニケーションになってしまう。ですから、商品開発段階で出てきたものを形にしたというより、いったんそれを壊して、そこで出てきたアイデアが世の中にちゃんと伝わるものになっているか、もう一度、自分に問い直す作業が必要でしたね。ただ、結果的には、最初の段階で出てきたものに戻ったということなんですが。

変わらない広告のフレーム

──最初の形というのは具体的に言うと……。

加藤   「伊右衛門」という商品名は「福井伊右衛門」という京都の老舗茶舗福寿園創業者の名前なんです。その伊右衛門をキャラクターに立てようというところは、意見が一致していました。その「伊右衛門」のキャラクターをどうするのか、豪傑として描いてはどうかなどいろいろな案が出てきました。最終的には、福寿園さんという200年以上続く京都の老舗のお茶屋さんと組んでつくっているというところを一番大切にすべきだ、お茶づくりに真摯に向きあっている伊右衛門さんの姿を描くのが王道・正解ではないかということになったんですね。

永井   福寿園の初代のお茶づくりにかけた思いを起点にするなら、時代は今じゃなくて200年前の江戸時代ですよね。そこから、伊右衛門を支える妻は、そののれんは、というふうにかたちにしていきました。お茶という商品の成り立ちからするととても素直な設定なんですよね。

加藤   特に、京都の伝統と老舗ののれんをイメージさせた“丸に茶”のアイコンは、立ち上がりのときから、パッケージはもちろんテレビCMから店頭に至るまで使っていて、ものすごく機能していると思います。これまで使い続けてきたその積み重ねが、財産になっていると思いますね。

──ブランド要素もそうですが、「伊右衛門」はブランドの世界観がはっきりしていますね。

加藤   広告の登場人物の人格と「伊右衛門」という製品の人格が一致しているところが強みだと思いますね。2004年の立ち上がりから、基本的に出演するタレントやコミュニケーションの核の部分が変わっていないというのは、最近の広告では珍しいと思います。サントリーの商品では「伊右衛門」だけだと思いますね。

永井   広告で本来とは違うものをその商品に付加するのは、限界がありますね。やはり、その商品から素直に立ち上がったコミュニケーションのフレームというのは、長く受け入れてもらえるし、継続していけるのではないでしょうか。

加藤   清涼飲料というのはコンビニ主体で売られる商品ですからどうしても短期決戦という側面がある。広告も、どうしてもインパクト重視、その場で一発当てるみたいなクリエイティブを考えがちです。「伊右衛門」は、そうではなく、しっかりと地に足のついた王道のクリエイティブを貫いてきた。そこが良かったと思っています。やはり永井さんのチームが長期的な視野に立ってブランディングを考えてきてくれたことが、今の成功につながっていると思いますね。

抹茶の撮り方を数十通り検証

──今回の新聞広告の「抹茶入り伊右衛門」ですが、どういう考えで作られたのでしょうか。

加藤   10月2日に発売された「抹茶入り伊右衛門」は、「伊右衛門」の再活性化=リバイタライズというコンセプトを持って世に送り出した商品です。もともと「伊右衛門」は国産茶葉を使用した旨み豊かな味わいの緑茶として発売していたのですが、抹茶を従来の3倍入れることで、圧倒的なコク・深みを追求しています。ですから、オリエンでは広告も再出発のつもりで考えてくださいというお願いをしました。

永井   それから、これまでのお茶にはない抹茶たっぷりの“味”を伝えることもポイントでした。僕自身もともとの「伊右衛門」の味も好きですが、新しい「伊右衛門」は目隠しテストでもこれまでより圧倒的においしいという評価を得ていました。その「おいしさ」をどう伝えるか、半年間くらい、本当にいろいろな提案やディスカッションをさせていただきましたね。

加藤   その一連のディスカッションの中では、これまで一貫して変えてこなかったコミュニケーションのフレームそのものすら変えるという案まで出てきたのですが、最終的には「伊右衛門」のストーリーの原点に立ち戻りました。もう少し具体的に言うと、「伊右衛門が抹茶入りになった」という情報軸とこれまで続けてきた情緒軸の二本柱でこの商品を動かしていこうということになったのです。それで出てきたのが、店頭から新聞広告、テレビCM、交通広告まで抹茶の緑で全部埋めてしまおうという戦略です。
  例えば、テレビCMでは最初、「伊右衛門」のパッケージを出さない宣言篇のティーザー広告をやりました。まず、抹茶のシズル感を出すために、抹茶を上から降らせた映像に、「急須のお茶を超える。」「抹茶入り伊右衛門、はじまる。」というナレーションが入るCMです。

永井   これまでの「伊右衛門」のフレーム=情緒軸は守りながら、加藤さんは情報軸と言われましたが、「抹茶入り」というニュースをどう伝えるか。そこで抹茶をどう見せれば魅力的に見えるのか。徹底的に検証しました。抹茶を飛ばしたり、降らせたり、溶かしたり、テスト撮影を何度も行いながら数十通りはシミュレーションしました。それでたどり着いたのが、テレビCMは空中に噴霧するという方法でした。

──新聞広告は、抹茶が降り積もった感じですね。

永井   実は、同じプリントメディアでも、新聞広告と店頭広告では変えてあります。新聞広告は45度くらいの角度から手前をくっきり、奥を意図的にぼかした撮り方をしています。それに対して店頭広告は真上から抹茶の粒子全体が鮮明に見えるように撮りました。なぜかというと、同じグラフィック広告でも、新聞広告と店頭広告では見る距離や接触時間が違うからです。新聞広告は手元で見るものですし、接触時間は短いと言っても数秒間は見られる。一方、店頭広告は、基本離れたところから瞬間的にしか見られない。だから、新聞広告のように奥をぼかしてニュアンスを出すよりも、見た瞬間、抹茶の緑がパーンと目に入ったほうがいい。そういう細かい計算もしながら各媒体の抹茶の表現を検証していきました。

加藤   それから、抹茶の緑というのは印刷では再現が難しい色です。以前でしたら実際の掲載までかなり不安でしたが、今回の掲載では、最近の新聞広告の色の再現力の高さを改めて実感しました。

サントリー “抹茶入り「伊右衛門」” 新聞広告

10月2日 朝刊

サントリー “抹茶入り「伊右衛門」” 店頭広告

店頭広告

──最初のオリエンでは、これまでのコミュニケーションフレームを変える提案も求めたと言うことですが。

加藤   製品のリバイタライズを受け、コミュニケーションもリスタートしたいという広告を出す側のわがままかもしれないですね。もっと違う方向はないか、もっと違うアプローチはないかと思ってしまう。新聞広告も最終的に決まるまで、本当にいろいろな案を永井さんには考えてもらいました。その中でこの新聞広告の案が出てきたときは、「あっ、これで決まったな」と直感しました。結局、ぐるーっと大きく回って、これまで作ってきた「伊右衛門」の世界にまた戻ったということですが、ただそのプロセスがあるからこそ、やはり納得して広告を出稿できる。それは、「伊右衛門」というブランドの核、原点を毎回、確認する作業をしているということかもしれないですね。

加藤:1947年東京都生まれ。1970年早稲田大学卒業後、サントリー入社。宣伝部に所属し、現在に至る。主な仕事に、ワイン「金曜日はワインを買う日」、山崎「作家のキープボトル」、ローヤル「ピーター・フォーク」「ヨーヨー・マ」など。
永井:1961年東京都生まれ。1985年多摩美術大学卒業後、博報堂入社。2003年、(株)HAKUHODO DESIGNを設立。主な仕事に、サントリー「伊右衛門」「ザ・プレミアムモルツ」、資生堂「企業広告」、日本郵政「民営化キャンペーン」など。

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