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コラム数字を読む

(Tue Aug 05 12:36:00 JST 2014/2014年8・10月号 数字を読む)

Vol.4 小宮一慶 経営コンサルタント

Kazuyoshi Komiya

経営コンサルタント。株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役。その他、十数社の非常勤取締役や監査役などを務める。1957年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業後、東京銀行に入行。ダートマス大学タック経営大学院でMBAを取得し、岡本アソシエイツ取締役に就任。国際コンサルティングにあたる。93年UNTAC(国連カンボジア暫定統治機構)選挙監視員。95年に小宮コンサルタンツを設立。経営、会計・財務、金融などで著作100冊以上。近著に『社長の心得』(ディスカヴァー21)。日経BPnetビズカレッジ『小宮一慶のスイスイわかる経済!"数字力"トレーニング』、東洋経済オンライン『小宮一慶の会計でわかる日本経済の論点』等に連載中。

Kazuyoshi Komiya

数字力を高める第一歩は 「関心」と「関連づけ」

  皆さんはご自身の給与はどれくらいかを知っていると思いますが、日本のGDP(国内総生産)はいくらかご存じですか。ひょっとしたら給与は、とても細かい数字まで把握しているけど、GDPは見当もつかないという人もいるのではないでしょうか。
  これは、給与には関心があるけれども、GDPには関心がない人が多いからです。しかし、次の説明を聞けば、GDPにも関心を持てるのではないでしょうか。

  GDP(正確には実額のGDPである名目GDP)は、日本国内で作り出された付加価値の合計です。最近の数字(2014年1-3月期)ですと、年換算で487兆円です。これだけでは、単なる数字ですね。しかし、実は、この6割以上は、給与として働く人に分配されているのです。GDPは給与の源泉なのです(図1)。
  ですから、GDP、それも一人あたりの名目GDPが長期的に増加しない限りは、皆さんの給与も上がっていかないということになります。ここまでの説明を聞くと、少しGDPにも関心を持てますね。
  もう少し、GDPのお話を続けると、実は、現状の名目GDPは1990年代初頭とそれほど変わらない数字です。日本はこの二十数年間、GDPのベースでは全くと言ってよいほど、成長していないのです。先ほど、「給与の源泉」というお話をしたので、それに関連づけると、私が、就職したのは1981年ですが、この頃のGDPは、現在の半分くらいでした。私の初任給は10万円ちょっとでした。90年代初頭に就職した方の大部分は、初任給が15万円から20万円くらいの間だったと思います。そして、最近就職した人の初任給も、その程度です。それは、名目GDPが増加していないからです。ちなみに、一人あたりの給与がピークだったのは1997年です。現在はそれ以下ですが、それも名目GDPが増えないからです。

  このように、給与とGDPを関連付けられれば、皆さんも関心を持つことができますね。つまり、数字に限らず、ものごとを深く知るきっかけは「関心」で、一見、関心のなさそうなことでも「関連づけ」をすることで、関心を持つことができるようになります。GDPや働いている会社の売上高や利益のような大きな数字も、自分の給与などに関連づけて考えれば、関心を持てるようになるのです。
  そして、自社の売上高に関心を持てれば、次は業界全体の数字にも関心を広げていけばいいのです。さらには、自社の売上高を業界全体の数字で割れば、自社の「シェア」も分かるようになりますね。
  その数字をチェックする日を決めておくのもひとつの手です。たとえば、私は、成人式にはその年の成人数(今年は121万人)、敬老の日には高齢者比率(約26%)などの数字をチェックするようにしています。年始の新聞にはたいてい前年に生まれた子供の数(昨年は103万人)が載ります。自社の数字は、決算が発表されたときにチェックする習慣にしておけばいいでしょう。ここで述べたような基本となる数字を知れば、自然にその周辺にある数字にも興味を持つようになりますから、自然に自身の数字の生きた「データベース」も拡充していくものです。そうなればしめたもの、どんどん「数字力」が上がっていきます。要は「関心」と「関連づけ」です。

具体的に数字で考える習慣で思考停止を打破する

  ビジネスマンに必要な能力のひとつは間違いなく数字を読む力、つまり「数字力」です。ビジネスでは、結果の大部分が売上高や利益、あるいは生産高や処理件数といった数字で表されるだけでなく、結果を出すためのプロセスでも数字が使われることがとても多いからです。その数字に対する「感性」が、ビジネスマンの優劣を決める部分も少なくありません。
  私は、経営コンサルタントという仕事柄、多くの会議に出ますが、その際に、「もう少し安ければ」とか「もっと頑張れ」といった発言が出たときには必ず、次のように確認します。「もう少しとは、何円ですか」、「もっと頑張る、とは具体的に何をどれくらいやればいいのですか」と聞くのです。
  漠然と話していると、それで何となく分かったような気になるのですが、実は、具体的に何をすればいいかが分からず、そこで思考停止になってしまうのです。その思考停止を打破するのが、具体化、とくに数字に落とし込んで考えることです。数字に落とし込むことが、話の信頼度を高めるとともに、目標達成への道筋も具体化させるのです。
  そのためには、普段から数字で考えるクセをつけることです。「多い、少ない」、「高い、低い」などの形容詞が出てきたら、それを「具体的にはいくら」と考えるようにするのです。そうすると、数字だけでなく、すべてのことを漠然と考えるのではなく、精緻に具体的に考えられるようになります。

どの単位までの数字を把握するか

  そうやって普段から数字でものごとを考えるようになると、数字力は格段に上がっていきますが、もうひとつ大切なことは、どの単位までの数字を把握すればよいかということです。先ほどの日本の名目GDPなら兆円単位まで知っていれば十分です。ざっくり500兆円でも問題はないでしょう。
  私は、非常勤の役員や顧問をしている会社が十数社あるので、取締役会や戦略会議に出るのが仕事ですが、腕の良い社長は、もちろん、自社の売上高や利益などを、時系列にある程度正確に把握している方が多いです。そして、中には売上高などでは「小さな数字はいらない。100万円単位で十分」とおっしゃる方もいます。あまり細かい数字にとらわれると「木を見て森を見ず」ということになりかねないからです。大局観が必要です。
  しかし、同じ社長は、「人時生産性(一人あたり1時間当たりの生産性)」を見る場合には、1円単位で細かく見ています。その会社では9000人の人が働いていますから、1年に平均1800時間働くとすれば1円違うだけで、利益額で1620万円、5円違えばその5倍違うことになるからです。
  数字を見る場合には、まず、どの数字を見るか、そしてそれをどの単位で把握していればいいかを考えなければなりませんが、これも慣れの部分とともに、やはり、その数字やその元となる業務などにどれだけの関心をもっているかにかかっている部分が大きいのです。

常識の罠、見え方の罠

  しかし、数字も万能ではありません。落とし穴があるのです。数字は客観的で具体的なものですが、それでも、場合によってはバイアス(偏見)がかかることがあります。

  以前、こういうことがありました。ニューヨークにお客さまをお連れしたときに、ある方の好意で、1億円するロレックスの時計を見せてもらったことがありました。1億円のロレックスを見たお客さまの中には、「数百万のロレックスなら安いね」とおっしゃった人もいました。もちろん、数百万円の時計もとても高価なものですが、1億円のものを見ると、数百万円はそれほど高く感じないのです。数字は、客観的なものですが、見せ方(見え方)によっては、バイアスがかかることにも注意が必要です。
  一方、消費税増税により、内税だった表示が一部外税になりました。「1980円」で内税(5%)だったものが「1890円」で外税(8%)になると一瞬、安くなった気分になりますが、これは実は内税では2041円です。そして、1980円(5%、内税)の本体価格は1886円なので、消費税分の値上げだけでなく、4円ですが本体価格も上がっているわけです(図2)。
  数字というのは、見え方があり、実は感覚的なものもあるのです。数字には見る側のバイアスがかかるということを気にしながら、数字に対する感性を高めることで「数字力」アップが図れます。

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