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コラムFashion Insight ーブランドビジネスのトップに聞く

(2012.2.1/2012年2・3月号 Fashion Insight)

お客様の声をくみ取って本物を提供 男性市場、靴からウエアも開拓
LVJグループ株式会社 ベルルッティ カンパニー プレジデント&CEO 今村英雄 氏 田居克人 一般社団法人日本ファッション・エディターズ・クラブ代表理事

LVJグループ株式会社 ベルルッティ カンパニー プレジデント&CEO  今村英雄 氏

──東日本大震災の影響は?

  業界全体、厳しい状況だったと思います。関東の店舗を中心に一時臨時休業をしました。ただ、4月以降は、毎月、前年度を超える売り上げになりました。何か特別なことをやったわけでも、仕掛けをつくったわけでもありませんが……。男性はこだわりの消費を求めています。物そのものだけではなく、ある意味、夢を求めています。震災後、自分をふるい立たせる、満足のいく買い物をしたいという思いがあったのかもしれませんね。

──ラグジュアリーな商品を買う層はいつの時代もいるわけですが、震災後、未来がわからない状況だからこそ、本当に欲しいものがわかるということなんでしょうかね。

  これは常々スタッフとも話していることですが、ベルルッティは紳士靴の中で決して安いものでない、ただ価格にあったクオリティーがあり、よいものを長く使いたいというお客様の心理をしっかりくみ取らなければいけない、と。靴はお買い上げ頂いてからがビジネスです。靴は、歩くための道具ですから、キズもつけば、汚れもします。使いながらお客様が困っていることがあったら、すぐにケアをして、いいコンディションにしてさしあげるのが私たちの仕事です。そうしたケアサービスやそれを支える職人の技術などサービストータルのクオリティーがご理解いただけた結果ではないかと思います。

──職人の技術の鍛錬、スタッフの研修などには、かなりの時間と手間をかけられているのでしょうか。

  そうですね。店のスタッフ全員が、シューケアについてはかなりのレベルに達しています。また、一部の者は、パリでパティーヌという靴の色付け技法を学んでいるので、お買い上げいただいた後、色を少し変えたいというご要望があれば国内で対応できる体制になっています。こうした対応は、私たちのブランドが長年培ってきたノウハウであり、ユニークなところですね。

──日本のマーケットでのベルルッティの位置付けは?

  パリの本店の次にロンドンに2号店が出て、3番目が日本なんです。つまりグローバルな戦略を立てた当初から、日本はとても重要なマーケットでしたね。実際、それから10数年たち、日本では国内に9店舗のネットワークがあります。これは他の国にはない、世界最大の規模です。今では主要市場におけるビジネス全体の約3分の1が日本でのビジネスになっているほどです。

──日本人の琴線に触れる何かがあるんですね。

  フランス本社もよくわかっていることですが、日本のお客様はこだわりの心理を持っている。良いものであれば、それは口コミで広まっていく。そういう仕組みが10数年をかけて定着してきたのだと思います。それと、今後の展望ということでいうと、100年以上の歴史の中で初めてメンズウエアを始めます。アレッサンドロ・サルトリをデザイナーとして迎え、この秋からトータルなファッションを提案していきます。

──メンズウエア全体が今、わりと好調の中、とてもタイミングがよいですね。

  ありがとうございます。LVMHグループの中で、男性に特化したブランドというのはベルルッティだけなんですね。あと男性向けとなると、お酒などの嗜好品ですから。男性マーケットはこれからまだまだ開拓される余地がありますから、アグレッシブにやっていきたいと思っています。ただ、ファッショナブルにとは考えていません。流行を追うのではなく、靴と同じで、長く愛されるウエアを提案していこうと思っています。

ベルルッティ

──ラグジュアリーのマーケットは、日本で今後どうなっていくと思いますか。

  ラグジュアリーはなくなることはないと思いますし、バブル期のようなクレージーな成長ではなく、むしろ着実に広がっていくと思います。もちろんブランドは選別されていくとは思いますが。

──続いていくブランドも淘汰されるブランドもあると思います。続いていくために必要なことは?

  ブランドが生き残るとすれば、それはつまりお客様によって残させていただいているわけですね。そう考えると、お客様から学ぶことがいちばん大切なこと。この10数年、日本からのお客様の声をパリの本社にも届け、商品やサービスに反映させています。いわゆる「改善」ポイントについては、日本からの要望に耳を傾けることが多いです。

──靴、それから今後はウエアも含め、どんな人にベルルッティを身につけてほしいですか。

  世代を問わず、ベルルッティの世界観に共鳴いただける方ならどなたでも。ウエアのコレクションでも、20代から70代までのモデルが登場しました。あらゆる世代のニーズに応えられる製品づくり、サービス体制を続けていきたいと思います。

ベルルッティの日本の創業以来、代表として活躍されている今村さんからは、当然のことだが、ブランドに対する愛情と、揺るぎのない自信が感じられ、お話を伺っていてこちらも気持ちが良くなるほどだった。

今村英雄(Hideo Imamura)
  1959年、東京生まれ。1982年、筑波大情報卒。同年、松下電器(現パナソニック)入社。モバイルコミュニケーション機器の海外マーケティング・セールスチーム所属。1990年、企業スポンサーシップにより、インターナショナル・ユニヴァーシティ・オブ・ジャパン(国際大学経営大学院)にてMBA。1998年、ルイ・ヴィトン ジャパン、シュービジネス事業部設立に伴い、事業部長として入社。同時にベルルッティ・ジャパン開設準備室を立ち上げる。以来、今日に至るまで、日本におけるベルルッティのプレジデント&CEOとして、成長戦略の立案と事業構築に携わってきた。

〔筆者プロフィル〕

中央公論新社事業戦略本部副本部長兼編集企画部長。多くの雑誌の編集部を経て、「エルジャポン」「マリ・クレール」の編集長を歴任。1999年よりファッションメディアの責任者の団体である一般社団法人日本ファッション・エディターズ・クラブの代表理事。読売新聞本紙ファッション特集「Visions」の監修者、ファッション・ターゲットメディア「YOMIURI STYLE MAGAZINE」(タブロイド判)の編集長を務める。
(社)日本ファッション・エディターズ・クラブ http://www.fec-japan.com

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