adv.yomiuriトップページへ

ojoトップ  > コラム  > 広告日和  > 実験報告と警告。

コラム広告日和

(Fri Feb 05 10:00:00 JST 2016/2016年2・3月号 広告日和)

実験報告と警告。
澤本嘉光 電通 クリエーティブボード エグゼクティブ・クリエーティブディレクター/CMプランナー

  きっかけは、僕がここ数年審査委員長をやらせて頂いているACC(全日本シーエム放送連盟)のラジオCM部門の審査会での会話からでした。
  審査委員をお願いしている吉本のお笑いグループ「グランジ」の遠山大輔さんに山ほどラジオCMを聞いた感想を伺ってみると、「これ、自分たちならこうするとか考えちゃうんですよね」という発言。「じゃあ、ラジオCM、作ってみませんか?」
  遠山さんと、同じグランジのメンバーの五明拓弥さんに、ラジオCM制作に実際に参加して頂きました。それもコンペ形式で。つまりクライアントからの課題のオリエンテーションから、企画、プレゼン作業、そして収録までフルで。若手コピーライターと完全な原稿競合。いくら知名度があっても、原稿によっては一本も作れない可能性がある競争でした。
  遠山さんは若い人たちに絶大な人気を誇るラジオ番組「スクールオブロック」のパーソナリティー。是非、ラジオCMを作るという経験をして欲しかった、というのがひとつの理由ですが、なによりラジオCMは何か新しい動きを、刺激を起こさないといけないと思っていたからです。
  「ラジオCMは」と書きましたが、実はラジオCMのみならずマス媒体のコンテンツは、というのが正しい表記なのですが。

  ラジオCMを書くのは広告代理店やフリーのコピーライター、もしくは放送局の人、というのが今の「常識」です。これがもう何十年も続いて来ている結構閉鎖的な世界。審査しているとどうしても「定型」「常識」が出来ているのは感じていて、なかなかそこを壊すような暴力的なものは出てきません。佳作秀作はあるけど問題作が無い状態。それを打破するにはジャンルの違う人が参入するのが一番だとずっと考えていて、今回その実験をしてみたということです。
  ラジオ自体が若者にアプローチして行くには、番組もそうですが、コンテンツのひとつとしてCMが魅力的なこと、と、実験的な場であると思えることが大事だと。実は番組がかつてそうであったように。
  結果は、かなりの本数をグランジ陣営が作ることに。
  コンペに参加したコピーライターの若手にもすごく刺激になったようです。まず原稿に、縛られていないある種の自由さが残っている。僕らが「これ、ダメなんじゃないかな」と思うような原稿もあえてプレゼンしてもらったのですが、クライアント側からはそれが高評価だったり。思いました、僕らが知らないうちに経験則という規制をかけてる所がかなり多いのではないかと。この「経験則」というおっさんの大義名分での規制はどのメディアの何を作るにもかけてしまいがちで、それが若手の活躍を抑えてしまっている原因のひとつになっている気がします。過剰な経験則縛りは新しい表現の大きな障害になる。思い直しました、自分の行動を。
  そして芸人さん、プレゼンが無茶苦茶に面白い。ひとつの出し物です。プレゼンが面白いと原稿は面白く見える、そこに真剣に力をかけるべき、という忘れかけてた真理をこれまた思い出しました。
  そして実際に通った原稿を読む役者の配役が絶妙。名前も知らないような(すみません!)芸人の方をポンポン挙げて来て、普段のラジオCMナレーターとはまったく違ったエンターテインメントになって行きます。
  いや、面白かった。ラジオCM、まだいろいろ出来るな、と。反省としては、最終的な納品の時にちょっとだけ僕らが自分の理解範疇で安心するような原稿変更のアドバイスをしたりしてしまったことで、もしかしたら本来の大胆さが少しだけ失われてしまった気がします。

  異業種の方、小説家でも、脚本家でも、構成作家でも、いろいろな世界の方がラジオCMで面白さを競う状態が出来て行けば、そこを起点としてラジオというメディア自体に若年層の興味も持たせることが出来るのでは、と考えます。その競争の中にリスナーも参加できる形も取れるとさらにいろいろなものが動くのではないかとラジオを自分も活躍できる身近な、そして活発なメディアと思えば興味も持てると思いますし。その旗頭としてラジオCMを担ぎたいという気持ちがあります。
  また「ルーキー・スマート」と言いますか、十分に学習していないこと、初めてのことでベストな結果を出せる、という事象を、オールドメディアと言われているマスにも思い切って適用させて実験してみると何かが起こるんじゃないかなあという実験でもあります。新人であること、無知であることは財産にさえなりうるし、経験はときに足かせになるというこの考え方が意外と年功序列で保守的なマスのコンテンツにも拡大するともしかしたら面白いことになるかなあと。
  どんどん実験をして行きたい。実験が今一番足りていないことだと表現の世界では思っているので。まあつまり邪魔なのは自分たちじゃないのか、ってことにもなるのですが。新しいものと経験則で作って行く佳作とで対等に戦って行けばいいかなと思っています。
  僕は「委員長」とか長のつくものはあまり好きではなく、昔から、先頭を走る人の後ろについて「あっち行け」とか言うのが好きな、尊敬する人は諸葛亮孔明とか河井継之助なタイプなのですが、今回、ラジオにいろいろな変化を起こそうとする時、委員長だから出来る偉そうなこともあるんだなと思いました。あまり長くやると権力を持ったと勘違いしそうなので注意しますが、やれることはやってみようと思うので、もしアイデアがあったら教えてください。

〔筆者プロフィル〕

1966年、長崎市生まれ。1990年、東京大学文学部国文科卒業、電通に入社。ソフトバンクモバイル「ホワイト家族」、東京ガス「ガス・パッ・チョ!」、中央酪農会議「牛乳に相談だ」、家庭教師のトライ「ハイジ」、トヨタ自動車「ドラえもん」、読売新聞など、次々と話題のテレビCMを制作している。著書に小説「おとうさんは同級生」、小説「犬と私の10の約束」(ペンネーム=サイトウアカリ)。前者は読売新聞会員制サービスyorimoの連載を単行本化。後者の映画脚本も執筆。2014年1月に公開された映画「ジャッジ!」の脚本も担当。クリエイター・オブ・ザ・イヤー(2000年、06年、08年)、カンヌ国際広告祭賞、ADFEST(アジア太平洋広告祭)グランプリ、クリオ賞、TCC賞グランプリ、ACCグランプリなど、受賞多数。数多くの海外の広告賞の審査員も歴任。

News & Report

〈No.849 リーディングトレンド〉

月末の金曜日に退社時間を早める「プレミアムフライデー」が、いよいよスタートする。午後3時に退社し、余暇を楽しんでもらおうという取り組みは、クールビズのように新たなビジネススタイル、ライフスタイルとして定着し、ビジネスチャンスとなることを目指している。

〈No.849 ojo interview〉

砥川 直大さん(アサツー ディ・ケイ クリエイティブディレクター)

〈No.849 読み解き読者調査〉

新製品からロングセラーまで商品が多彩な食品ですが、生活者はその銘柄をどのように選んでいるのでしょうか。銘柄の選定状況や理由、食品ジャンル別の購入パターンを調べました。

インタビュー

第一三共ヘルスケア
小さな広告シリーズ500回記念で全面広告を掲載 4コマ漫画下の小枠広告の継続の力を実感