企業訪問 2005.3/vol.7-No.12

革新的な第三のビール投入で過去最高利益を達成
 “第三のビール”が売れているという。ビールでも発泡酒でもない、第三のビールとはどういうものか。また、消費者に受け入れられている理由は何か。サッポロビール マーケティング本部 宣伝室長 塩道欽也氏に話を聞いた。
塩道 欽也氏 風呂上がりの一杯に欠かせないビール。のどごしの爽快感がたまらないが、実はビールの四割弱が税負担分だと知れば、その味もいつもより苦々しく感じられることだろう。
 日本ではビール類への課税を、原材料に占める麦芽比率などによって四段階に分けている。最も高い税率が掛けられている「ビール」は麦芽比率67%以上のものを指し、税率は350ミリ・リットル一缶につき77.7円。これに対して麦芽比率が低い「発泡酒」は46.99円。これにより、標準的な希望小売価格(消費税抜きの昨年の価格)はビールの218円に対し、発泡酒は145円と安くなる。
 これに対し、ビールや発泡酒にも分類されない原料や製法を用い、さらなる低税率、低価格を達成したのが第三のビール(ビール風飲料)といわれるもの。その中でも特に支持されているのが、サッポロビールの「ドラフトワン」である。

味と価格が受けて大ヒット

 ドラフトワンは原料に一切麦芽を用いず、代わりにエンドウ豆から抽出した「エンドウたんぱく」を使ってビール酵母を発酵させている。このため、税制上は紹興酒などと同じ「その他の雑酒2」に区分され、税額は三百五十ミリ・リットル缶あたり24.20円、価格も125円と発泡酒より20円程度下げることができた。
 ただ、ドラフトワンは安さだけを求めてエンドウたんぱくを使用したわけではないという。
 「ビールは麦芽を使うことによって旨みを出すが、それが重さにもつながる。お客様の望むすっきりした商品を提供するため約四年にわたり大豆やアワなど様々な穀物を試した結果、一番味がすっきりしたエンドウたんぱくにたどり着いた」と同社マーケティング本部 宣伝室長 塩道欽也氏は開発の経緯を語る。
 昨年2月4日から全国発売されると、そのすっきりとした味わいと求めやすい価格が人気を集め、即座に定番商品としての地位を獲得した。
 その人気の強さはサッポロビールの予想をも上回るものだった。年初の販売目標1000万ケースはわずか半年で達成。その後も二度にわたり上方修正を繰り返し、販売目標を1700万ケースに引き上げたものの、12月に月間最高売り上げとなる221万ケースを記録。最終的には1815万ケースに達した。
 成功の要因として、塩道氏は「画期的な新商品としてマスコミに取り上げられたこと」、「九州四県で先行発売したこと」の二点を挙げる。特に先行発売時に広告表現を見直し、修正した上で全国発売できたことが大きいという。
 「当初、お客さんは『125円の発泡酒が出た』程度にしか思ってくれなかった。なぜ安いかが理解されていなかったのだ。そのため、全国発売時には『税制が違うから安いのですよ』ということと『すっきりした味』の二点を強調するようにした。その結果、多くの商品の中から選んでもらうことができた」
 こうして、サッポロビールは昨年過去最高の経常利益を記録したのである。

新聞広告で「ちがい」をアピール

 サッポロビールの成功を見て、今まで様子見だったアサヒビール、キリンビールも「第三のビール」市場に参入し、この春に大手四社の製品が出そろうことになった。
 四社が市場競争することで、今年の「第三のビール」市場は昨年の2.5〜3倍に拡大し、反面、ビールや発泡酒市場は縮小するとみられている。
 税率の高いビールと発泡酒が減少し、低い第三のビールが増加することは、そのまま税収入減につながる。この事態に危機感を抱いた財務省と政府税調は、ビールの税率を下げて第三のビールの税率を上げる酒税の抜本見直しを行う方針を昨秋示した。
 この増税の動きに、サッポロビールは自社ホームページ上で増税反対キャンペーンを展開。新聞広告でもビールや発泡酒との違いをアピールし、「売れたら増税、はおかしい」と消費者に直接訴える作戦に出た。
 「当社はビールのまがい物として出したわけではなく、まったく新しい酒として出したことを、まず消費者の方々に理解してもらいたかった。WEB上の特設サイトには5万通以上の意見が寄せられ、そのうち97%の方々が増税に反対であるとのご意見だった」と反響の大きさを語る。
 こうした動きに政府税調は2005年度からの増税を断念。議論を翌年に持ち越すこととなった。

サッポロビールは新聞広告紙上で「ドラフトワン」とビール・発泡酒との違いを訴え、安易な増税論議に一石を投じた(11月27日朝刊)
サッポロビールは新聞広告紙上で「ドラフトワン」とビール・発泡酒との違いを訴え、安易な増税論議に一石を投じた(11月27日朝刊)
新しいお酒を次々に開発

 第三のビールが好調のサッポロビールだが、もちろんビールや発泡酒にも力を入れている。同社は2003年秋に「すべての麦芽とホップを06年までに協働契約栽培にする」と宣言した。これは、同社の目が行き届いた畑で収穫され、品質の保証された原料のみを使ってビールと発泡酒をつくるということを意味する。
 さらに、同社はドラフトワンに代表されるように、従来の酒類のカテゴリーや常識にとらわれない商品開発にも積極的だ。昨年九月から近畿圏で先行発売している「シングルメイド」は、スパークリングワインとしては珍しい缶入りだ。これも当初の販売計画数を上回っているという。
 今後も、サッポロビールからオリジナリティーあふれた新しい酒が提案されることを楽しみにしたい。

(佐藤)
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