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4か月間無料のきもの着付け教室「日本和装」に注目が集まっている。きもの着付け教室なのに、なぜ、無料でできるのか。日本和装を全国で展開するヨシダホールディングス 代表取締役 吉田 重久氏に、その仕組みを聞いた。
国内の呉服市場は、この10年で3分の1に縮んだといわれる。不況のため高額商品が売れず、生活のカジュアル化で着物を着る機会が減ったからだ。
しかし、日本人が着物への興味を失ったと考えるのは早計だ。夏になればカラフルな浴衣が百貨店のウインドーを飾り、成人式や結婚式にはやはり着物は欠かせない。着付けのけいこも根強い人気がある。
その中で、年間5万人もの受講希望者が集まるきもの着付け教室がある。それが、ヨシダホールディングスが運営する日本和装だ。
無料教室で着物人口拡大へ
昭和62年、着物の普及・振興を目的に福岡からスタートした日本和装は、現在では全国に15拠点、269教室を抱えるまでに成長した。その成長の原動力となり、かつ日本和装最大の特徴でもあるのが“4か月間無料”という点だ。これは、一部実費を除き、週1回、全15回の受講料や入会金など、すべて含めて無料なのだという。
そうしたところが支持され、開講以来17年間に送り出した修了生は、約7万3000人に上るという。
“無料”で教えることについて吉田氏は「着物の着付けというのは日本の大切な文化だからこそ、無料で教わることは当たり前。ネクタイの締め方講座となんら変わることはない」と語る。
しかし、株式会社である以上、ヨシダホールディングスも収益を上げなければいけないはず。受講料収益が見込めない以上、どこから利益を得るのだろうか。
「呉服メーカーや卸問屋などがスポンサードしてくれている。彼らにとっても、着物人口が増える無料着付け教室はありがたい存在だ」と説明する。もちろん、自分で着物を着られるようになると、着物が欲しくなる人も出てくるだろう。「その時には、我々のスポンサーでもある一流メーカーのきちんとしたものを、安価にお世話させてもらうことも十分に可能だ」と抜かりはない。
日本和装の講義テーマは「着ること、着る機会、物の価値」だという。着方を覚え、パーティーなどの着る機会が提供され、さらに物の価値、つまり、着物の良さを値段ではなく、素材や縫製などから見抜く力をつけることだという。
着物の持つ価値が分かるようになれば、百貨店や街の呉服屋へも気後れせずに入っていけるようになり、結果的に流通量が拡大する。
「我々は着物のファンを作り、新しい市場を開拓している。今まで着物なんて買おうとも思わなかった人が、買ってくれるようになるのだ」
着物の“テレビ局”を目指して
吉田氏は学生時代に洋装品の輸入販売業を始めた。だが、「日本人の体形に一番似合うものを考えた結果、和服にたどり着いた」という。しかし、着物人口を考えると、当時も商売として成り立つものではなかった。「そこで発想を変え、消費者ではなく、着物を売りたい人からお金をもらおうと思い至ったのだ」
現在、日本和装は年間約5万人の受講希望者が集まるが、受講者の約半数は同社を通じて着物を購入しているという。良く売れる価格帯は一そろえ25、6万円の物だが、総取扱額としては年間約62億円にも上る。同社はその一部を納品代行費や集金代行費として、呉服メーカーや卸問屋から受け取っている。つまり「買った人からは頂かずに、売った人から頂く」のだ。
最終的に、日本和装は着物の“テレビ局”のような存在を目指すという。民放のテレビ局はスポンサーからお金をもらってCMを流しているので、視聴者は無料で番組を見ることができる。もちろん、そのCMの商品を無理に買わせられることもない。日本和装の場合、テレビの視聴者は今までの修了生と応募登録している19万という人々であり、スポンサーは呉服メーカーや卸問屋だ。
「視聴者は皆、着物のファンだ。ファンなら黙っていても買ってくれる。つまり、売るよりも売れていく仕組みを作ることが、我々が目指すビジネスモデルだ」
株式会社化で新事業展開
現在、ヨシダホールディングスは文化事業として日本和装を始めとする着物関連を取り扱っているが、17年間で築き上げた19万人という人的ネットワークを活用した新規事業を立ち上げようとしている。そのため、運営会社であるヨシダホールディングスを昨年株式会社化し、組織を揺るぎないものにした。個人情報を守るためにも必要な処置だったという。「皆が喜ぶことを事業化していきたい。そのため、他人の資本も受け入れられるよう株式会社化した」
今後、日本和装の4か月間無料きもの着付け教室は点から面へと展開し、年間6万人程度の規模を維持し、大規模化は考えていないという。
「着物なんて時代遅れだ、といわれた時もあったが、今は誰もそんなことをいう人はいない。着物の時代はもうすぐ来る。それまでに、少しでも着物ファンの数を増やしておきたい」
着物という古いものを使った新しいビジネスは、まさにベンチャーそのものだ。誰もが考えつかないような次の一手を、我々に見せてくれるだろう。
(佐藤)
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