企業訪問 2003.12/vol.6-No.9

ジェネリック医薬品で国民医療費を削減
 ジェネリック医薬品という言葉を耳にする機会が最近増えてきた。Generic=「一般的な・商標登録されていない」医薬品とはどういうものか。また、注目される理由について、大洋薬品工業 代表取締役社長 新谷重樹氏に話を聞いた。
新谷重樹氏 病院などで使われる医療用医薬品には、新規医薬品(新薬)と後発医薬品の2種類がある。製薬メーカーが研究開発し、新たな薬効を国に承認されたものを新薬と呼び、その新薬の特許消滅後に販売される、成分・容量・薬効等が新薬と同等であると承認されたものを後発医薬品=ジェネリック医薬品と呼んでいる。
 ただ、ジェネリック医薬品は新薬と全く同一なものかというと、そうでもない。飲みやすく小型にするため、製法や添加物を変更する場合も多いという。
 しかし、一番大きな違いは価格だ。ジェネリック医薬品は、新薬の2割から8割の低価格で提供されるため、医療費節約の手段として注目されているのだ。そのジェネリック医薬品の製造・販売で、業界トップの品ぞろえを誇っているのが大洋薬品工業である。

大手も認める製造技術力

 1930年、岐阜・高山で創業した中野天栄堂を前身とする大洋薬品工業は、名古屋に本社を構える中堅製薬メーカーである。
 事業の柱はジェネリック医薬品の製造・販売ならびに大手製薬メーカーからの医薬品受託生産。昨年度の売り上げは170億円だった。
 ジェネリック医薬品の販売額は業界3位だが、特筆すべきはその経営効率の高さである。
 「経常利益率は全製薬メーカー中第7位。一人当たりの生産性は第5位(152万円/月)となっている。後発医薬品メーカー内では断トツのトップだ」
 同社一番の稼ぎ頭はプレフィルドシリンジ製剤だ。これは注射器内にあらかじめ薬剤が充填されている製品で、医師や看護師の手間を大幅に省き、容器である注射器に薬剤名が表示されていることから、医療過誤も回避できると期待されている。
 また、プレフィルドシリンジ製剤の製造には、経口剤と比べ高度な技術が必要とされ、同社の製造技術力の高さの証明ともなっている。
 この技術力に注目しているのが武田薬品工業を筆頭とする大手製薬メーカーだ。
 最近の製薬業界はアウトソーシングが進んでいる。特に売上高上位の製薬メーカーは、外資系メーカーに対抗するため、ファブレス、つまり工場のない会社になろうとしている。工場のコストをゼロにし、その分を開発費に投入しようとしているのだ。
 「作ることをやめた製薬メーカーに代わり、製造を受託しているのが大洋だ。現在、受託しているのは50社153品目にのぼる。これは国内ナンバーワンだ」
 特に、新薬事法が施行され、外部完全製造委託が可能となる平成17年4月以降は、この流れに拍車がかかると思われる。同社も、昨年度23億円であった受託金額が、平成18年度には100億円を超えるだろうと予想している。

ジェネリックで医療費削減

ジェネリック医薬品の普及促進のため新聞広告を積極的に活用(10月5日付朝刊)
 今、日本では年間30兆4000億円もの医療費が使われているが、高齢化がさらに進む2025年には81兆円まで膨らむとの予想もある。これは、現在の国家予算とほぼ同額だ。「だからこそ、安い薬を使わなくてはいけない時代が来る」と新谷氏は力説する。
 しかし、医療費削減の救世主であるはずのジェネリック医薬品だが、日本での普及はあまり芳しくない。
 欧米では、ジェネリック医薬品のシェアは数量ベースで50%を超えているのに対し、日本はやっと10%を超えたばかりだ。どうして日本では普及が遅れているのだろうか。
 「それは日本では代替調剤が認められていないからだ」と指摘する。
 代替調剤というのは、医師が処方した薬を、薬剤師が品質と価格を考慮し、患者の同意の上で同一成分の他の薬に変更することが認められる制度のことである。つまり、患者自身が新薬かジェネリック医薬品かを選択できるのである。
 この代替調剤が認められれば、かなり多くの新薬がジェネリック医薬品に置き換えられるはずだ。もし、日本も欧米並みに新薬がジェネリック医薬品に転換されると、約1兆円の薬剤費が節約できるといわれている。
 もちろん、ジェネリック医薬品が、医師や薬剤師から新薬同様の信頼を得ることも、普及には不可欠だ。
 そのため、国はすべてのジェネリック医薬品について、品質の再評価作業を現在進めている。新薬と比較し、改めて合格したものだけを医療用医薬品品質評価情報集(オレンジブック)に収録する。平成17年度までに終了する予定だ。
 「国によるお墨付きだ。これで、誰からも抵抗なく使ってもらえるはずだ。国だって安い後発品を積極的に使って欲しいのだ」

積極的な設備投資

 同社はこれまで自社高山工場に400億円を超す設備投資を行ってきた。最先端の製造装置である無菌製造装置アイソレーターの設置数は世界第2位。レーザーアンプル溶閉機は世界に先駆けて導入した。
 「大手ではリスクを考え出来ないことも、大洋は簡単にやってしまう。
これも高い収益性があればこそ」
 ジェネリック医薬品の需要増と新薬事法施行による外部委託の活発化をにらみ、果敢に挑戦し続ける大洋薬品工業。新たな飛躍の準備は既に整った。

(佐藤)
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