今月のデータ 2002.10/vol.5-No.7

「本離れ」の実情を探る

 全国出版協会・出版科学研究所によれば、2001年の出版物の販売金額は5年連続のマイナス成長が続いており、厳しい状況にある。確かに「本が売れない」という声を聞くが、読書人は本当に減っているのだろうか。
 今回は、読売新聞社の一般個人調査から、書籍の閲読・購入状況と情報源について過去5年間のデータの推移を見ながら探っていく。
過去3か月間の平均閲読冊数の推移 過去3か月間の平均閲読冊数の推移


読んでいる冊数は増加

 はじめに、2001年一般個人調査の結果から、過去3か月間の平均閲読冊数と平均購入冊数、「過去3か月間に(本を)読んでいない」人の割合を見てみよう。(表1)
 全体の平均閲読冊数は3.3冊。性年代別で見ると、最も平均閲読冊数が多いのは女性40代で4.3冊。次いで、男性50代(3.8冊)、男性40代・女性20代(3.5冊)となっている。
 平均購入冊数は、全体で2.4冊。男性50代が3.1冊で最も多い。以下、男性40代(3.0冊)、女性40代(2.8冊)となっている。女性40代は平均4.3冊読んでいるが、この結果から見ると買って読んでいる冊数は約半分ということになる。
 そして、「3か月間に読んでいない」人の割合は全体で30.9%。最もスコアが低い、すなわち過去3か月間の読書率が高い年代は、女性40代(19.3%)。次いで、女性20代、男性40代となった。
 では、これらの数値を過去5年間の時系列で見てみよう。 
 全体の平均閲読冊数は、最も少なかった九八年で2.5冊。その後微増し、2001年では3.3冊となった。この5年間で、男女とも10代・20代は目立った増減は見られないが、男性50・60代、女性40〜60代で閲読冊数の増加が見られる。
 全体の平均購入冊数を見てみると、過去五年間を通じて2冊前後を行き来している。性年代別では、男女とも10代の購入冊数が減少、男性50・60代、女性40代の増加傾向がうかがえる。
 また、「3か月間に読んでいない」と答えた人の割合は、全体では98年の38.5%をピークに減少、2001年では98年より約8ポイント減の30.9%となり、読書をする人は増えている。しかし、性年代別のスコアを見てみると、男女とも10代が97年から2001年で、「読んでいない」スコアが約9ポイント増加しており、若年層の読書離れは進行しつつある。一方で、女性40〜60代の「読んでいない」スコアが目立って減少しており、この年代の読書人の割合は確実に増えていることがわかる。
 全体を通して見てみると、本を読む人の割合は増加し、読んでいる本の冊数も増加傾向にあるものの、購入冊数には変化が見られなかった。

表1 平均閲読冊数、平均購入冊数、書籍を読んでいない人の割合(過去3か月間)
表1
*表はエクセルデータでご覧になれます。

増える図書館、新古書店の利用者

 では人々は読みたい本をどこで手に入れているのだろうか。
 2001年10月に行われた読売新聞の読書に関する全国世論調査によると、読みたい本は「買う」が76%、「図書館を利用する」14%、「人から借りる」6%だった。79年の同じ調査と比較すると、「買う」は同数値だが、逆に「図書館」が9ポイント増加している。79年に約1億2900万点だった全国の公共図書館の個人への貸出総数は、99年には約5億2400百万点(日本図書館協会調べ)へと大幅にアップしているが、この数値もこうした利用実態を反映したものといえるだろう。
 また、「本を主にどこで買うか」では、「書店」が87%、次いで、ここ数年店舗が急増している「新古書店」9%、「コンビニや駅の売店」8%、「従来の古本屋」3%だった。とりわけ、「新古書店」を挙げた人は、20代で18%、学生で40%と若い年代で高い利用率となっている。
 しばしば出版業界低迷の要因として、人々の「本離れ」傾向が挙げられる。しかし、過去五年間の一般個人調査からは「本離れ」の傾向を示す結果は浮かび上がっておらず、むしろ全体では読書人の割合は増加傾向が見られた。「本離れ」が進んでいるというよりも、世論調査の結果から明らかになったように、図書館や新古書店の利用率の上昇が「本が売れない」という現象に大きく影響していると言えそうだ。

性や年代で異なる好きなジャンル

 図1は、よく読む書籍のジャンル別に性年代構成を表しており、各ジャンルの書籍がどの年代によく読まれているかの傾向がわかる。
 嗜好ジャンル別に性年代構成の特徴を見てみると、「ビジネス・パソコン」「専門書」「ノンフィクション・社会・歴史」の読者は圧倒的に男性がメーン。特に「ビジネス・パソコン」は男性20〜50代で約75%を占めている。
 「日本文学」は、男性50・60代がボリュームゾーン。「外国文学」は、全体の性年代構成に近く、年代別の傾向は特に見られない。「芸術」は、男女差は見られないが、男女とも20代でよく読まれている。「旅行・地理」の読者は、すべての年代に平均的にわたっているが、特に女性50代の割合が高い。「外国推理小説」「日本推理小説」「外国現代文学」は、年代構成がよく似ており女性読者が約六割。「実用・生活情報」「エッセー」「児童書・語学」は、当然のことながら女性が七割以上を占めており、特に「エッセー」は女性20・30代、「児童書・語学」は女性30代の読者から高い支持を得ていることがわかる。

図1
図1
●ジャンル内訳
ビジネス・パソコン(経済、ビジネス書、パソコン・IT関連)/専門書(哲学・心理・宗教、自然科学・理工学、政治・法律)/ノンフィクション・社会・歴史(ノンフィクション、社会・事件、歴史)/日本文学(日本の古典文学、時代小説、詩・短歌・俳句、歴史・伝奇)/外国文学(外国の古典文学、時代小説、詩・短歌・俳句、歴史・伝奇)/芸術(音楽、写真集・画集)/旅行・地理(旅行ガイド、地理・紀行)/外国推理小説(外国の推理・ミステリー小説)/日本推理小説(日本の推理・ミステリー小説)/外国現代文学(外国の現代小説、SF小説、恋愛小説)/日本現代文学(日本の現代小説、SF小説、恋愛小説)/実用・生活情報(財テク、教育・育児、映画・演劇、健康・医療、スポーツ、ガーデニング、資格・試験・就職、インテリア、料理、手芸、ファッション、占い)/エッセー(エッセー、タレントエッセー)/児童書・語学(学習参考書・語学・絵本)


本や雑誌を知るメディアは新聞

 最後に、書籍や雑誌の情報源について見てみよう。(表2)
 新しく出た書籍を何で知ることが多いかを尋ねたところ、最も多くの人が回答したのは「店頭で」(49.7%)。以下、「新聞の広告」(44.5%)、「テレビ番組」(38.1%)、「新聞の読書ページの紹介」(33.1%)の順で続いている。2000年の同じ調査では4位(28.5%)だったテレビ番組は、約10ポイント伸びて3位になっている。これは現在は放送されていないが、調査を実施した当時にあった本の情報番組の影響と推測される。
 雑誌に関して見てみると、「最新号の発売を知るのは……」「記事や特集の内容を知るのは……」「創刊されたことを知るのは……」のすべての項目で「新聞の広告」が情報源のトップとなった。特に「新聞の広告」は女性に高く注目されており、女性に書籍や雑誌に関する情報を届けるためには新聞広告が適していると言えるだろう。

表2
表2
*表はエクセルデータでご覧になれます。


(高木)

2001年一般個人調査 調査概要
調査期間 2001年6月29日〜7月16日
調査地域 東京40km圏
サンプル数 4200人
サンプリング 住民基本台帳を基にした二段階 無作為抽出
調査方法 訪問留め置き法
有効回収数(率) 3020(71.9%)
調査企画・設計 読売新聞社広告局
実査・レターヘッド (株)ビデオリサーチ

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