特集 2001.10/vol.4-No.7

ウェブがメディアになる日
 
引き算でつくるウェブサイト

NTTデータHP
NTTデータのコーポレートサイト
http://www.nttdata.co.jp/
基幹システムやインフラなど一般的にとらえにくいサービスを提供する巨大企業サイトの構造的リストラクチャリングとブランディングを手がける。機能性と情緒性を併せ持った印象的なトップページや、サイト本体へのエリア定義を明確にしたグリッドデザインなど、すべてに最新の技術を導入している。
 ユーザーがどんな経験で、どんな気持ちになって、いまこのサイトを見ているかを先読みして、その後はここでこういう言い方をしてお迎えしていく。それが、はじめに言った単なるデータとしてのホームページとメディアとして機能するホームページの違いだ。ウェブサイトをつくるということは、どういうマインドで、何をトリガーにしてそこにたどりつくかを計画することだ。
 例えば、企業のサイトなら、その人はIR情報を見に来たのかもしれないし、何かカタログを見たいと思って来たのかもしれない。人から聞いたり、テレビや新聞で見たり、何かをトリガーにして、何かを知りたくて来ている。その人を間違いなく知りたいところへつれていく。そのためにはどういう言葉遣いで、コンテンツをどうカテゴライズして、ラベリングして、ナビゲーションをどう設定していくか。
 それは、店舗設計に似ている。4階は子供服だからこういうカラーで、こういう気持ちでわくわくさせよう。地下は食料品売り場だから、歩くと夕食のお買い物ができるようにしよう。必要なのは、そういうナレッジの思想だ。
 だれにとっても使いやすいサイトを見つけ出していくのは、すでにあるものをまねてつくるようなプロセスではない。だれに、何を伝えて、何をしてもらいたいのか。そのために企業は何をやるべきかまで、踏み込まなければならないときがある。商品やサービス、各企業の考え方に合わせて一つ一つ考えていかなければならない。
 ウェブサイトづくりは、引き算のデザインだ。いらないデコレーションを付けて足し算をしていったら重たいデザインになってしまう。たちまち、ユーザーは不満を抱く。不要なものは全部排除していって、残すべきものだけをきっちり残しながら、それをより機能的に、魅力的にしながら紡いでいく編集作業だ。
 ウェブサイトの中にあるものはすべてボタンだ。極端にいうと全部機能だ。ユーザーは何かを押したら何かアクションが起こらないと「なぜ」と思ってしまう。駅張りのポスターなら何の反応もしなくて当たり前だと人は思うが、ウェブサイトは反応しなければ訪れた人の期待を裏切ることになる。だから、ありとあらゆることが全部反応できるようにする。しかし、ボタンは一度に一個しか押せないわけだから、その人にとっては他のボタンは全部ゴミになる。だから、引いていくしかない。畳んで、畳んで、カーソルを合わせたらパッと出てきて、選択しやすいようにする。人が一番ほしいものをすっと手に入れられる状態にすることが大事になってくる。

サイトのトーン&マナー

ムジ・ネット
ムジ・ネット「無印良品ポータル」
http://www.muji.net/
無印良品がネットワーク上でどんな価値を創造することができるか、その事業モデルから提案し単なるECサイトにとどまらないネットコミュニティー型のサイトをプロデュース。新たな無印ブランドの世界を大きく広げる。またネットショップは路面大規模店舗と同等の売り上げを毎月計上する成功サイト。
 いいサイトにするためには、さまざまなチェックポイントがある。それをぼくは、100の視点にまとめている。機能、デザイン、コンテンツ、オリジナリティー、バリューの5項目があって、それぞれ20のチェックポイントに分かれている。ウェブサイトでやるべきこと、やってはいけないこと。やるとしたらどうやるべきかを頭の中で一回考えるためのチェックリストだ。社内では、それを実際に使っている。
 ECサイト用にはさらに具体的な200のリストもつくっている。商品の持つ価値を伝えること。商品の価格を隠さないこと。支払総額が簡単にわかること。配送料無料を検討すること。返品にかかる費用は無料とし、そのことを明示すること……。なぜ、ここまで必要かと言えば、こういうことをきっちりやっていくことが、気持ちよく買い物ができるサイトにつながるからだ。eコマースのお店をつくるのは、既存の店舗をつくるのと変わらない。
 だから、ワーディング一つをとっても気が抜けない。「こちらへ」と言うのか、「いらっしゃいませ」と言うのか、「こんにちは」と言うのか。それによってそのサイトのトーン&マナーが決まってくる。

企業の企みを実現するデザイン

 企業は「企みを生業とする」と書く。10万円の商品の価値を顧客の中でどこまで増大させられるか、最大化させられるかというたくらみがプロダクトに内包されてないと、これからの商品やサービスはおそらく人々には受け入れられない。プロダクトをつくることをたくらみとしてきた時代は終わって、プロダクトを買ったことによって顧客の意識がどのように変化し、その経験が暮らしの中でどう作用するかに注目する時代になっている。顧客が「だれか」から、「どこ」にいて「何をしているか」を考える時代を経て、これからは、その顧客が「何を思っているか」に意識を向け、企業のたくらみを実現する時代になるということだ。企業のたくらみを「伝える」だけでなく、たくらみを「実現する」のがインタラクティブ・デザインだと思っている。

過去の否定から次の時代へ

 マス広告を打つと、確かにウェブサイトへのアクセスは跳ね上がる。ウェブサイトを訪れた人は、4分から5分は見ている。テレビで4、5分間も自社の商品を見てもらったり、メッセージを伝えることはそう簡単には実現できない。
 そうすると、新聞やテレビでやるべきこと、店頭のPOPとしてやるべきことは見えてくる。パソコンだけではなく携帯電話も今はインターネットにつながっているわけで、ウェブサイトを軸にしていろいろなことの関係性、コンテキストを考えていけば、全部うまく生かせる。必要なメディアを必要なだけ紡ぎましょうということだ。メディアバイイングとクリエイティブ、全体のプランニングがくし刺しになってないと意味がない。
 それには目的とゴールの設定をクリアにしていく。そして、それを検証する仕組みを入れておくことが必要だ。
 ぼくらは、実際の仕事でもクライアントとの話し合いの上で目標値を決めている。そして、それを検証する仕組みを実際に入れている。ウェブサイトをつくる側にとっては、これはかなり怖いことだ。ウェブサイトは公開した瞬間からレスポンスが返ってくるからだ。
 新しいことの提示は必ず今までのやり方の否定、拒否からスタートする。だから、結果を出さないと次はない。失敗できないプレッシャーがある。自分がやってきたことが間違ってないのかという不安にもかられる。
 でも、インターネットの世界には、それを助けてくれる次のことをやろうとしている世界中の人たちとの横のつながりがある。昔のデザインの世界は自分の手札を隠すのは当たり前だったが、そういう価値観を変えていかないと、次に行けない時代になっている。
 時間をかけてできあがったプログラミング・コードを1か月もたったらぼくはネット上に公開してしまう。すると、そのプログラムを使っただれかが新しいアイデアや機能をアドオンして返してくれる。またそれに新しいアイデアを乗せていく。昔のように隠していたら、同じものを繰り返して使っているだけでいつか腐らせてしまう。オープンソースは、インターネットの世界では普通に行われている。今までの価値観の中ではできないことも、ネットのパワーを理解していればこそできる。

福井信蔵氏
1959年兵庫県芦屋市生まれ。ファッションブランドのクリエイティブを多数手掛けた後、独立。Webデザインは1994年に独学で開始。現在、各分野のトップ企業をクライアントに持ち、トータルなクリエイティブワークを展開。1999年にウェブデザインアワード1999の金賞を受賞して以来、海外のデザイン賞の審査員を務めるなど現在名実ともに日本のWebデザイナーのトップに立つスペシャリスト。2000年7月ビジネスアーキテクツを設立。幅広い分野のスペシャリストたちと共に、上場企業を中心に新しいコミュニケーションメソッドを提供している。
主な受賞 1992年ニューヨーク・アートディレクターズクラブ(NYADC)、1995年第10回ロンドン国際広告賞、1997年GRAPHIS DESIGN、1999年ウェブデザインアワード1999金賞 2000年日経ウェブモーション2000銀賞、メディアマガジン インタラクティブアウォード2000ほか。
ビジネスアーキテクツ http://www.b-architects.com/


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