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“テクノロジスト”が考える、ちょっと未来のコミュニケーション(電通CDC クリエーティブ・テクノロジスト なかの かなさん)

なかのかなさんの仕事はなかなかユニークだ。広告会社のれっきとした社員だが、主に手がけるのはスマートフォン(スマホ)のアプリやIT関連の商品開発。AR(拡張現実)の技術を応用したクーポン獲得アプリ「iButterfly」や、脳波を検知して人の気分を猫の耳の垂れ具合で示すヘッドセット「necomimi」を商品化したり。広告と一見無縁なガジェット類を通して「4、5年先のコミュニケーション」のあり方を模索しているという。

── 肩書きは「クリエーティブテクノロジスト」。最新のITを活用した企画を数多く手がけられていますが、技術畑のご出身ではないそうですね。

もともと文系です。生物とかは好きだったのですが、数学がまったくダメで。抽象概念の把握力にきっと難があるんでしょうね。大学での専門は政治学だったのですが、熱心に出席したのは一般教養の講座。小学生の時から詩を書いていたので、大学1年生の時に、佐佐木幸綱先生の短歌のゼミに入って楽しかった思い出があります。

自分の学生時代が、インターネットの普及期と重なっていたこともあって、文系女子としてはネットを利用していた方だとは思います。ただ、そちらの方を仕事にするとは思ってもいませんでした。

── それがどうしてテック系に。

一番大きかったのは、大学を卒業して、就職したのがインターネット広告会社だったことでしょうね。そこで、ブログサービスの開設に参加し、テック系のニュースを熱心に収集して分析するようになりました。その中で、バラバラな要素が一つのアイデアとして統合される瞬間があって、それをサービスに反映させられることが面白くなりました。

── それが今の電通での仕事にもつながっているんですね。

「デジタルのわかるコピーライター求む」という電通の中途採用の募集に応募しました。2009年に入社すると、「スマホで何か新しいことを」というミッションを与えられました。iPhoneが日本で発売されてから日がそれほどたっていないころです。そこで、スマホで何ができるかを考えてみたんです。GPSで位置情報がわかり、カメラが付いていてインターネットともつながっている。思いついたのがAR(仮想現実)の技術を応用できないかということ。カメラを通して液晶画面に映った現実の空間に、デジタルの力を使って新たな現実を加えるというものです。

アプリによってコミュニケーションが能動的なものに変わっていく

── その発想は具体的な製品に結びつきましたか。

10年に「iButterfly」というアプリを開発しました。iPhoneのカメラを通して液晶画面に映った街に蝶がヒラヒラと飛び、iPhoneで捕まえる。それがクーポンになるというものです。iPhoneの位置情報と連動して、場所によって飛んでいる蝶が異なり、補虫網で捕まえるようにiPhoneを振って捕まえます。Bluetoothを使いユーザー間で蝶の交換もでき、新しいコミュニケーションツールとしてリリースしました。

── 昨年発表されて世界的に社会現象になった「ポケモンGO」に先駆けていましたね。

確かに早かった。ただ、アプリの開発より、アプリによってコミュニケーションが変わっていくことの方が面白いと思いました。それまでの広告は、上から降ってきてユーザーが受け取るという形式が一般的でした。それがITを活用することで、ユーザー自らクーポンを取りに行って集めるという能動的なコミュニケーションも可能になったんです。

── それから毎年のようにデジタルがらみのガジェットを発表していますね。中でも11年に発表した「necomimi」はヒット商品になりました。

よりパーソナルなコミュニケーションのあり方を探していて出会ったのが脳波センサー。脳波を測定できる安価な商品がアメリカで開発され、それを使ったヘッドセットです。脳波センサーは、人がどのぐらいリラックスしているか、あるいは集中しているかを数値化して示すことができます。necomimiでは集中していると、ヘッドセットに付けられた猫耳がピンと立ち、リラックスしているとクタッと垂れ下がるんです。

言葉を解さずに自分の気分を伝えられる一種のコミュニケーションツールとして注目されました。ネットでは猫動画が人気コンテンツになっていたこともあり、necomimiも動画にしたら、バズられるかもとひそかに思っていました。実際、12年に商品化され、海外でも広く受け入れられました。

── 最近はどのような取り組みを?

昨年発表したのが、小鳥の形をした音声認識コンピューター「COTOREES(コトリーズ)」。です。グーグルやアマゾンが日本でも最近発売したAIスピーカーのようにCOTOREESも音声で操作します。簡単な通訳をしてくるトランスバード、知りたいことを調べてくれるウィキバードなど、いくつかのモデルがあって、単機能なのが特徴です。

スマホのアプリが、モノとして外に出てきたら面白いだろうなと思ったのが開発のきっかけです。その際のユーザーインタフェースも文字入力やアイコンを操作するグラフィカルなものではなく、音声が中心になるだろうと見立てて企画を進めました。

Photo by Shinsuke Yasui

── どうして「鳥」だったのですか。

人間の声を真似できる動物ということで鳥をモチーフにしました。さらに「コンピューター」という言葉から連想される無機的な冷たいイメージとは対極的なデザインにしたかったので、かわいらしい小鳥に注目したわけです。小鳥だから最初は人の肩に乗るようなデザインも試してみたのですが、これはうまくいきませんでした。

── 昨年は、瞑想を支援するデバイスも発表しましたね。

三角おにぎりの形をしているので「Onigilin」と名づけました。生体信号から瞑想度を計測し、本体を握ると体の状況に合わせて、音や感触が変化します。座禅をしたときに手を組む感覚で持てる形ということでおにぎりの形を取り入れました。持ち運びが簡単なので、いつでも気軽に心と頭をリフレッシュできます。次世代メンタルトレーニングとして、アメリカのシリコンバレーの企業などで実践されるようになったマインドフルネス瞑想を気軽に体験できるデバイスです。

── 開発のきっかけは。

necomimiのデモンストレーションをしていて、リラックスして耳が垂れるところを見せなくてはならなかったのですが、緊張してしまい、なかなかうまくいかなかった。そこで息を長く吐いたり、アロマを嗅いだりすると、耳がちゃんと寝るようになったんですね。そこでマインドフルネスを得るきっかけになるデバイスを作ってみようと思ったんです。

── そうしたユニークなガジェットのアイデアはどのようにして思いつくのですか。

もちろん、テック系のニュースにアンテナを張り、その活用法を常に考えています。でも、ガジェットを必ずしも作りたいわけではないんですね。むしろ、開発した製品が人の行動にどのような影響を与えるのかに興味があります。その点で、モノを作っているようで実は未来のコミュニケーションのあり方を探っているのだと思います。「未来」というと大げさになりますが、「4、5年先の未来」と言った方がいいかもしれません。

クライアントのいる仕事と違って、未来の可能性を示したいと思っているので、商品を見た人が面白がってくれて、「こんなこともできるんじゃない」とアイデアがどんどん出てくるのが理想です。「necomimi」を開発しているときは、まさにそんな感じでした。

「触っていると優しい気持ちになれる新聞広告」なんてよくないですか。

── その仕事が広告とどのように関係してくるのでしょう。

自分の仕事は、最新技術を具体的なモノという形で一般の人にわかりやすく翻訳しているようなものだと思っています。その過程は、商品の魅力をどう広告するかという作業に近い部分があるではないでしょうか。弊社も最近は、広告の会社というよりコミュニケーションを手がける会社であるということをアピールするようになっていますし。

── さて、「4、5年後の新聞」はどのようになっているでしょうか。

新聞が読まれなくなったと言われていますが、4、5年でなくなってしまうということはもちろんないでしょう。私自身、新聞の広告を手がけたことはないのですが、紙という物質に興味があります。4、5年後に実現しているというわけではないのですが、新聞が配られたときの空気感のようなものが紙の色で表現できたら、面白そうな気がします。

具体的には大気の汚染度やスギ花粉の飛散量といった、その日の環境が紙の色に反映されていればいいなって思います。さらに進んで社会の雰囲気のようなものも紙の色に反映されるようになると、新聞を読んだときのイメージが結構変わるのではないでしょうか。

あと、新聞にシャンプーの広告が掲載されているとして、その広告の紙がそのままシャンプーのサンプルになったりするといいなって思いますね。将来的には、新聞紙の手触りについても何かできそうな気がします。たとえば、「触っていると優しい気持ちになれる新聞広告」なんてよくありませんか。

── 話は変わりますが、ボーダーの服がお好きなようですね。メディアに登場しているときは基本ボーダーの服ですね。

ここ7、8年ぐらいは、ずっとボーダーです。もちろん好きです。写真を撮られるのがものすごく苦手で、どうしたらいいだろうと思って、写真になったときに「ボーダーと眼鏡」といった感じで自分が記号化されてしまえば、苦手意識を克服できるかもと思って、この柄の服を着ています。

Nakano Kana

1980年生まれ。2005年、早稲田大学政経学部卒業。サイバーエージェントを経て、09年、電通入社。10年に社内外の仲間と未来のコミュニケーションのあり方を提案する「neurowear」設立。脳波センサーを用いたコミュニケーションツール「necomimi」が世界中でヒットし、米・TIME誌が選ぶ「世界のベスト発明50」に選ばれた。

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